「感性」領域に踏み込むAIが小売を変える!CEATEC 2023に見るデジタルの未来とは

河合 拓 (代表)
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ひさびさに、CEATEC(シーテック)2023に行くために幕張メッセに出向いた。大学生のスタートアップから、大手コンサルティングファーム、大手家電メーカーなどが集まる「デジタルの大祭典」 のはずだったが、会場は決して賑わっているわけでなく人気はまだらだった。今年のCEATECの傾向をひと言でいえば、「AIを活用した感情領域への進出」と「グリーン対応」だった。ただ、展示されている企業は、まだ研究段階、基礎技術の段階で「技術的にはすごいな」と感心するのだが、「これは、どんなことに使えるのだろう?」と事業戦略が見えにくかった。本連載では初となる、展示会を通じての評価、アパレル、小売での活用の方向性を示したいと思う。

CEATEC2023の様子(筆者撮影)

AIで「揺らぎ」や「感性」に踏み込む

 私が日本IBMに入社した時、最初に教えてもらった言葉が「コグニティブ」(cognitive、認知)という言葉だった。「コグニティブ」とは、ウィキペディアによれば、

 1つ目の定義では、「コグニティブコンピューティングとは学術的・方法論な意味合いとして『自律的な推論と知覚によって脳のメカニズムを模倣した計算知能を実装するシステムと方法論』を指す。あくまで技術の中身に焦点を当てた概念として比較的広い意味を持ち、AI(人工知能)やニューラルネットワークなどの技術も広く含んだ言葉として使われる」とある。さらに、「2つ目の定義の場合は、本来、『認知』『認識』という意味を持つ『コグニティブ(Cognitive)』を『人間が行う認知的タスク』という意味で捉え、人間の認知的タスクを支援する技術として『コグニティブコンピューティング』という言葉を使っています」としている。

 ようは、人間とコンピューターのやり取りは、「触る、聞く、話す、見る、香る」など5感を使って行うようになる、ということで、異論・反論はあろうかと思うが「コグニティブ」とはつまり、「コンピュータと人間の関係性を表したコンセプト」であり、仕組みやシステムの名称ではない。

 この説明で意味が掴みにくい方は、iPadを思い出していただければよい。Appleの製品はコンピュータとの対話の方法がコマンドから、グラフィカルUI、そして指でタッチするなど、よりITらしくない方法へ変わっている。当時、IBMは(なぜか今はあまり聞かなくなった)Watsonという人工知能に多大な投資をしてきたが、これは発展途上のもので、その目指すべき方向性を「コグニティブ」と名付けたのだということが分かった。

 今年のCEATEC23では全体的、この「コグニティブ」を体現したような方向性が感じられた。従来のコマンド入力のような冷たさと正確性が同居するコンピューティングから、揺らぎや仮説、感性や非連続思考にAIを使って踏み込もうという試みが多数見受けられたからである。この「非連続」というのが、一つのキーワードとなっており、これからのデジタルワールドの未来を感じる基本コンセプトと言えるだろう。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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