世界最強のユニクロ5兆円に自信のワケ!ファストリ23年8月期決算徹底分析
事業別ハイライト
海外だけでなく国内も好調の理由
ここからは、事業別に動向を見ていきたい。
①ユニクロ国内
順を追ってハイライトを説明しよう。まず、国内のユニクロ事業は、客数は減っているが客単価は11ポイントも上がっている。これで、売上収益は昨対比9.9%増の8904億円となった。好調な売上に伴い、販管費率は35%を切る34.7%である。
柳井氏はコメントで「今、ヒット商品は世界で売れる」と言いきった。「スーパーコンピュータ(スマホ)をほとんどの消費者が持つようになり、トレンドは瞬時に世界を飛び回る」からだ。極めて合理的な分析だ。私が、半年韓国に出張し、彼我のトレンド差の大きさを感じた時を思い出した。結局、人のエゴに訴求する洋服(西洋の服)でなく、「日本の伝統美によるベーシックで繊細」なものが世界で愛されているのだろう。
米国の長らくの赤字の要因についても、ニューヨークのデザインスタジオ設立からか、「トレンドの差」だと云っているアパレル専門家が沢山いたが、米国ユニクロの業績を大きく持ち上げた塚越氏は、「価格で安く売ろうとしすぎた。私たちは価値にあった価格でどうどうと売る」と言ってのけた。私が、広告代理店が幅を効かせるブランドに「価値ベースのブランド」を10年前に提唱した「ブランドで競争する技術」と同じ考え方だと密かに嬉しくなった。
さらに、ユニクロは「需要予測」についても、ことあるごとに「精度の高いMD計画」という言葉に代えていた。間違いなく、AIなどのハイテクを使っているのだろうが、これは、同社以外は真似できないためご用心いただきたい。なぜなら、ユニクロ以外のアパレルは製造委託 (商社OEM)がメーンで、どこで買っても差が無いからである。だから、ユニクロのような一人勝ちする「コモディティ商品」は、AI-MD(AIが最適化したMD)が有効に働くのだ。一説によると、ヒートテックにはVMIといって在庫水準点管理をベンダーにまかせ倉庫に積み増しているという。もはや、同社に「売れない」という言葉はなく、また逆に「売れること」が前提になれば、これだけのプレイができるのである。
②ユニクロ海外
今回、驚くべきは海外ユニクロ事業だ。なんと、昨対比28.5%アップで、売上は約1兆4300億円(日本は8900億円)。売上の6割を海外で稼ぐ本物のグローバル企業になったのだ。私は、SONYがウォークマンで華やかなりしころ、米国で「SONYが日本の会社であることを知っている米国人が少なかった」ことを思い出した。もはや、ユニクロにとって国籍はどうでもよいのかとおもいきや、ここで「日本美」と「コモディティ・ベーシック衣料・下着屋」を融合させたことでブランドの方向性が明確になった。そして、ライフウエアの概念もはっきり分かったのである。柳井氏が「日本の伝統美」について言及したのも、私には象徴的に感じられた。
これは、後付けの理論でなく、確かに「ユニクロ」のカタカナ文字は、佐藤可士和氏デザインのロゴに入っている。柳井氏と有能な経営陣には、日本の美が世界中で洗練の極みとされている「ミニマリズム」と深く交わっていることが、見えていたのだろう。
③ジーユー事業
ジーユーは先期赤字だったが23年8月期は人流の回復もあり2億6100万円の黒字である。ここは、将来Shein(シーイン)や世界アパレルとの対決がまっている。ジーユーに対する提言は紙面をあらためたい。私は、思い切ってザラMDをベンチマーキングしてはと思うのだが。
④グローバル・ブランド事業
こちらは、営業利益ベースで前期が▲7億円、今期はなんと▲30億円の赤字だ。ここに関しては、他社名で事業をするのでなく、世界ブランドとなったユニクロ:Cがこのセグメントにはいってゆくことであろうことは先週、先々週と論じたとおりだ。
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