ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇

河合 拓 (代表)
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海外に興味無く、いまだに中国・韓国は脅威ではないと錯覚!

textile industry worker checking inventory with digital tablet before shipping

 最初に断っておくが、私は日本を心から愛している。だからこそ、日本の力を世に知らしめるにはブランド・マーケティングこそが大事であり、「ブランドで競争する技術」(ダイヤモンド社)を処女作として上梓した。アジアの先端技術を再三ここで紹介し警報を鳴らしている私を売国奴と宣う方達にいいたい。 

 私が商社マンだった頃、「日本の技術を見たい」と、よく尾州地区にイタリア人をつれていったものだった。イタリア人は一生懸命日本の技術を研究し、また、長袖の赤いシャツを半袖の青と白のショートシャツに染め直し、着丈を半分にしてしまったときには、思わず歓声があがった。しかし、すでに愛知県・一宮にはこうした産業は跡形もなくきえてしまった。

 そして、いまだに「日本は安心安全、中国製や韓国製などの安物をお客が使うはずがない」と信じている「世捨て人」のような学者も存在する。しかし中韓は、官民をあげて日本の国家予算並みの投資を行ってきた。勝敗は明らかだ。

 その学者たちは、実業の経験がないから、例えば、Sheinが今でも一日で3000SKUの商品を「生産」できると信じている。私がこの連載にSheinの残品リセルの決定的な写真を掲載したのに、それを見もせず絵空事だと信じ、私は本件について深く聞きたいと投資銀行の海外本社からダイレクトに話をすることになった。これが日本の産業界のレベルである。

 またアパレル企業は、検品なら品質管理部という組織が専門でやっていて、4時間で3000枚を出荷しなければならないような場合、ライティング、穴あき、汚れを一枚ずつチェックするよう指導する。だが、そんなこと現場では不可能で、実質抜き取り検品になる。そんなとき「検品を中国でやれば良い」と誰かが言い出してはじめて「全量検品」が可能になることに気づくのだが、こうした発想はサラリーマン化したアパレル企業からはでてこなかった。現場で四苦八苦している商社や工場からでてきた発想なのだ。私は20代の中国人が数百人が目視検品をしているのをみて腰を抜かしたこともあった。

 すべては、現場をみていないから起きることだ。

無くなった方が良い半官半民団体

 半官半民の委員会や教育機関は、次々と合併を繰り返している。私は、自らがクビになったから言っているのではなく、いっそ無くなってしまえば良いと思っている。理由は、我々の血税を無駄に使っているからだ。私は、昔の生徒に「なんで河合さんの講座がないの?」と連絡が来る。

 半官半民団体は、特定アパレル企業の「天下り先」となっている。私が以前関わっていた半官半民の教育機関は巨額の預貯金があり、その平均年齢は65-70歳ぐらいだった。こうした活動に、ファーストリテイリングや外資SPAは参加しない。ムダだからだ。出るのはお爺さんと業務を知らない大学の先生で、先生は、ただひたすら「デジタルをいれろ」を繰り返す動画を見せていた。 

 その教育機関で最悪なのは、例えば私が最新の中国事情やSDGsの潮流について話をしても、出席者は課長クラスである点だ。本来は、取締役、社長がでて世界を学ぶべきで、そこから正しい判断ができるのだ。「経営者こそこの講演を聞くべきだ」とこれまた同じことを何年も繰り返すが、一度も実現した試しはない。結局、お遊びで、本気になっていないのだ。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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