ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇
素晴らしい技術を持つ日本、しかしマーケティングは三流
実は、日本という国は伝統的に素晴らしい技術力をもっている。忘れもしない思い出がある。ガラケー時代、すでに07年からバスや電車の乗り降りでは非接触型決済である「モバイルSuica」を「おサイフケータイ」を通じて利用できた*。一方、今や世界の覇者となったiPhoneは同じ07年から販売開始したものの、長らく非接触型決済には非対応でバーコードで代替していた。日本では2016年からようやく始まった。
注:モバイルSuicaの開始は2006年、バスでSuicaが使えるようになったのが2007年だ
しかし、その「おサイフケータイ」も「iモード」も「ガラケー」も今や消え去った。技術が負けたのではなく、製品トータルとしての付加価値でガラケーがiPhoneに負けたのだ。技術面でいかに優れていようと、使ってみれば、消費者にとっては、さほど差は無い。にも関わらず、日本企業は青い鳥を追いかけた。その間、Appleは世界中から技術でなく、一流デザイナーを雇い、シンプルで美しいiPhoneのデザインを構築、進化させていった。
Appleの哲学は至ってシンプルで、「消費者にとって必要なものは画面が空中に浮いている存在で、コンピュータと人間の会話は指で行う」と、iMacやiPadなど今となっては誰も疑わないUI / UXを創造した。マニアックな世界に閉じこもり、消費者の生活をどう変えるのかという大きな視点が抜けている日本企業をあざ笑うかのようだ。
「技術は一流、マーケティングは三流」は、繊維産業の全てにあてはまる。
話を繊維・アパレル産業に戻すと、今でこそハイライトされている「ホールガーメント」(無縫製)も同じことが言える。一体、この技術は消費者にどのような価値を提供するのか答えはまちまちだ。
例えばユニクロは、「つなぎ目がない着心地の良さ」とキャッチコピーを書いているが、「ニットのリンキング(ニット製品のつなぎ目)の有無を着ただけで感じられる人」が何人世界にいるのだろうかと思う。着心地など変わらない。むしろ、針の減らし目こそニットがニットたるゆえんで、クラフトマンシップを感じさせる。
ホールガーメントは、「編み」という、一本の糸を編むことでパーツを成形し服のパーツをつくる。ニットというのは、編み目と編み目を目視で一針(1インチに16本の針がある)に通してつなぐ手作業が必要になるのだが、これが、不要になる生産効率こそホールガーメントの真骨頂だ。だが、私から言わせれば「So What?(それがどうした?)である。 それよりもイタリアのナポリあたりの職人がハサミで切った波打った生地の方に高い金を払うだろう。それがブランドというものだ。
日本が最も強い「素材産業」についても同じことが言える。もちろん全ての企業がというわけではないが、一例として、一時期、数百億円もの金を集め注目をあつめた「タンパク質」繊維は一体どこにいったのだろうか。この会社は大学時代に起業されたもので、将来のSDGsもあって、恐ろしいほどのバリエーション(企業価値)がついた。
簡単にこの繊維の仕組みを説明すると、世の中のものというものは、すべてタンパク質でできている。それを元のタンパク質に変えて全く異なる繊維に変えてしまう技術なのだ。これは、一般的にサーキュラーエコノミーと言われるが、その実態は前工程で無造作に捨てられたゴミを手作業で分類してい
だが私はこの技術も上記と同様の運命を辿るのではと危惧している。結局、すべてが技術視点で消費者視点ではないからだ。私から言わせればバリューチェーンの設計がデタラメであり、通常の素材の「100倍の値段」になるという。
不完全な技術でもどんどん世に出して、アップデートという名目で徐々に改良してゆくデジタルアプリの戦略を見直してもらいたい。「完全なものしか世に出さない」というのは技術者のエゴで、どどんなに素晴らしい技術でもタイミングが外れればいずれ市場から
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