「魔法の杖ではない」ChatGPTの最大の活用方法は「ディベート」にある理由

河合 拓 (代表)
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ビジネスや教育の現場で
ChatGPTを使わせるべき理由と活用方法

Supatman/istock
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 このように考察をすすめてゆくと大きな課題に直面する。大学など、レポートでChat GPTをどう認めるか悩んでいる教育機関があるようだがここが分からないのだ。情報など、今後はスマホから自在に入手できる時代が来るとみるべきで、高等教育はこうしたツールを身につけている前提で、生徒自身の考えや主張を評価すべきだと思わないだろうか?

  古ぼけた知識を問うような教育を行っても全く価値はないとは言い切れないと私は思うが、例えば、Chat GPTを思う存分使わせ、「MMT(現代貨幣理論)の有効性を論じろ」という問いを出せば良い。ChatGPTからはどうせ複数の意見がでるだけだから、結論か否かを冒頭に書き、その根拠と有効な条件、そうでない条件、そして、それらを統合して今日本は緩和か緊縮かというテーマに自身の意見をディベートしてみればよい。米国のように学生と組んで一大プロジェクト化し、アベノミクスは緩和政策として十分だったのか、という議論をしてもおもしろいし、ビッグマックインデックスはもう古いので、ユニクロの「ヒートテックインデックス」 というのをつくり世界のヒートテックの価格をビッグマックの代わりに物価指数としてデフォルト化してしまうという提案も面白い。

  さらに、アイデアはどんどん広がる。例えば、少子化対策や国力の政策論として、大学無償化を叫んでいる方もいらっしゃるが、例えば発想をがらりと変えるとおもしろいことが見えてくる。つまり、Chat GPTに個社固有の解を出す力がないわけだから、私が提案したような学びの場としてのUIを被せれば、一夜にしてすばらしい大学 (教育)ができあがる。私が不安があるのは、日本の場合「規制が先」に行われがちな点である。少なくとも、知識丸暗記型の講義を続けている教授の替わりは十分務まるし、時に感情がない分、教授以上に冷静なガイドをしてくれる可能性も高い。

 まとめよう。AIとの付き合い方は、恐れるのではなく、どのような使い方が企業にとって、そして、国に取って、そして、人類にとってよいのかという基礎技術の応用にこそ着目すべきだ。

 ある大学では内密にChat GPTを使っている生徒がいて、大学側はそれを検出するソフト開発に躍起になり、そのいたちごっこが行われるという、相変わらずどうしようもないところに時間も労力も浪費している。

 これは、アパレル業界を例にすると、複雑怪奇になったバリューチェーンをシンプルにしようとPLMをいれたものの、流通各段階で個社個社が導入したために、データとしては整理整頓されたものの、ますます複雑で無駄の多い無価値連鎖となり、なんら本質的な解決にはなっていない状態にあるのと同じことだ。

 デジタルネイティブの若手が大量にアパレル産業から離脱していったことと同じことを、教育でもやろうとしているようなものである。

 私は、Chat GPTについては、文科省認定の称号は不要だがリスキリングしたい社会人(例えば、私がネットで経営の実務の講座を半年間やると山のように人材が集まってくる)のような、「使える人材のため」に無償化し、さらに、評価もChat GPTにやらせて特定の科目ごとに単位が集約できるようなインターフェースをつくるのがもっともよいと思う。つまり、Chat GPTなどのようなハイテクツールは、人に考え、そして、自分なりの答えを生み出させる力を誘発させる田中角栄の日本列島改造論ならぬ、日本列島総知識武装化計画をこの10年でやればよい。パイロットして、まずはアパレルからスタートするのはどうだろうか。私と、私の中までプロジェクトチームをつくりPOC(概念実証)設計からやらせていただければ、確実に成功させる自信がある。

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プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

株式会社FRI & Company ltd..代表(2023年8月1日に社名を河合拓コンサルティング株式会社より変更)Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。最近ではAI企業、金管楽器メーカー、中国企業などのスタートアップ企業のIPO支援などアパレル産業以外にクライアントは広がっている。座右の銘は生涯現役。現在は慈悲で大学院で経営学の、独学で英語の学び直しを行っている。
著作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送サテライトTV」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議にたびたび出席し産業政策を提出。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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