+Jが挑むモンクレールの牙城 ユニクロにとって勝負の「冬」となる理由

河合 拓
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今、ファーストリテイリングは勝負の時

私が、この分析を過去形で書いたのには理由がある。こうした状況は変わってしまったからである。その背景には、昨今のSDGsによる「無駄な買い物を控える空気」と、社会問題や経済対策による「消費者の所得低下」がある。
日本の経済停滞は年々酷くなっているように思う。今、ワーキングプア(生活保護を受ける人と同じ年収)と呼ばれる年収200万円未満の人は、働く女性の40%を占めており、その女性がアパレルの主たる消費者なのだ(※女性の中にはパートなどをあえて選ぶ層もいるためこの数字がそのまま日本の貧困を表しているとは限らない)。

こうした社会背景から、「プレミアム感への憧れ」と「買えないお財布事情」が共存するなか、そのいずれをも満たすのが+Jである。J最終章である今シーズンのなかでも最後の販売となる「12月上旬」販売予定のダウンコートに私は壮大な意味を見いだすのである。

グローバルSPAが唯一日本のアパレル企業に負け、そして、大きな衣料品のマーケットを占める重衣料。ここを攻略してこそ、同社の「ライフウエア」の戦略が完成するといったら言いすぎか。同社の、有名ブランドとのコラボ商品が増えてきたのは、そのような意味(品質はユニクロ品質で、プレミアムブランド感もある) があるように思う。そして、このセグメントこそ、ユニクロが欲しい最後の「プレミアム」セグメントだと私は思うのだ。

実際、+Jのジルサンダー氏は、同社との契約にこのような発言をしている。
「ユニクロからの話には驚きましたが、=中略= プレタポルテが高くなりすぎたせいもありますが、ベーシックで体にフィットするTシャツやジャケット、コートを作りたい。値段は今までの服の100分の1くらいだけれど、最新の技術があればできる。この仕事は私から人々への贈り物なのです。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/ジル・サンダー)

 なんとも魅力的な言葉ではないか。10万円も払っていた「プレミアムダウン」が、ユニバレせず、デザイナー本人のお墨付きがもらえるわけだ。

 

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