外資とファンド主導のM&A アパレル業界再編勃発! ビームス、アマゾンにPB供給開始は再編の序章

河合 拓
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2)大量生産は何も悪くない

kzenon/istock
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日本では「環境破壊の原因は大量生産と大量消費」というが、これは、全く逆だ。分割生産、少量生産こそが、アジア大陸に山のような残反在庫を増やし、またSheinのような中国企業の宝の宝庫となっている。そもそも、そうしたことをいう人の共通点は、アパレルのMD業務をやったことのない素人ばかりである。

 例えば、大量生産というが、日本のMD業務で必要量以上の商品調達など昔から誰もやっていない。逆に、アパレルが弱体化した上工程に無茶な小ロット生産を押しつける「仕入先虐め」を防ぐため「下請法」という制度ができたことさえ知らない。一般的に、生産ロットが合わない場合、反物や糸など素材で残し、使う予定がなければFOBに乗せる、あるいは償却して損金コストを工場の研究開発費に計上する。工業簿記の基本だ。余剰在庫の問題は、純粋にMD計画が実需から外れた結果であり、MDの五適である 量、時期、価格、デザイン、チャネルのいずれかがズレた結果であり、大量生産とは、何に対して大量なのか、意味不明な用語なのである。

さらにいえば、MD業務にフォーカスする以前に、売れないブランドは何をやっても売れない。なぜ、そうした企業が今でも資金繰りが回っているのか。そうした企業こそ営業活動を止めれば余剰在庫はなくなるだろう。実際、米国では次々とアパレルを破綻させている。

 私が提言した案は、新型コロナウイルスによる企業支援と自己責任の線引きを行い、補助金にメリハリをつけろというものだ。例えば、貸借対照表の流動資産を3年以上と以下で分け、3年以上の在庫簿価見合金額からEC比率をマイナスした金額に対して一切資金援助しないというものだ。逆にいえば、3年以内であればEC比率を引いた金額に対して資金援助を行う3年以上前の在庫責任はコロナとは無関係だからだ。さらに、不運にも失業す人が出れば、半年から一年間の給与保証を行い転職支援に金を使う。コロナウイルスから国は企業を守るが、そうでない経営失策は経営者が責任を取るというシンプルルールを徹底すれば良い。

3)AI 予測で、余剰在庫問題は解決しない

政府有識者会議で驚いたのは、未だにAI需要予測を余剰在庫削減に掲げていたことだった。これが論理破綻していることは考えれば直ぐ分かる。

例えば、環境庁のHPに消費者一人あたりの年間服の消費量は18枚と書かれている。日本の衣料品消費人口を1億人とすると、年間消費量は18億点だ。そこに35億~40億点が新規投入されるだけでなく、前年からのキャリー在庫があるはずだから、残在庫の半分をキャリーとしても、この5年だけで少なくとも日本に50億点以上の隠された余剰在庫が存在する計算になる。ここに、さらに40-35億点がさらに毎年積み増される。本当に人工知能の予測で余剰在庫の問題が解決するのなら、私の自宅は4人家族だから、衣料品の支出が410倍に増えなければ計算が合わない。なぜこんな簡単なことがわからないのか。

さらに論理破綻が決定的なのは、AIによる予測で余剰在庫が解決すると論じる人達は、そもそも「計画」が問題で、商品投入は十分追いついているという前提で考えている点だ。プロパー消化率が落ちているのは、商品供給が追いついていないからで、そこはアパレルが素材リスクを持たず、弱小企業である上工程の工場や問屋に押しつけ、サプライチェーンで最も重要なロットと納期というボトルネックを解消していないからである。つまりこの問題は、トレンド予測の前に「投入量」の問題を解決せねばならなく、みずから過剰生産を論じておきながら解決の論点が量から的中率にすり替えられている。

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