ユニクロなどグローバルSPAと真逆の理由でSDGsを強化するスーパーブランド その隠された高収益の真実とは

河合 拓
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 一昨年前、日本のアパレルコスト構造について、その実態を公開し波紋を広げた事件があったが、あんなものは大した話ではない。トップ・メゾンの原価構造は、そんなことは比較にならないほど低い。いくら何でもコストがわからなければ在庫量簿価算出ができないということで、そっと友人から見せてもらったことがあり、その低さに驚いた。ここでも、いらぬ誤解を与えぬためあえて書くことを控えるが、我々が有り難がって大枚をはたいて買っているブランド品、そして、二次流通にだしても日本のブランドとは比較にならないほどの高額を維持して買い取りしてくれるブランド品は、恐ろしいほどの低コストで作られ、販売しているという事実を皆知らない。

本国とリージョンのフェアな関係

 さらに驚くことは、ゼネラルマネジャーと称する人と話をすると、日本のアパレルが衣料品をQR(クイックレスポンス)の名の下にドタバタ騒ぎで追加投入していることを全くしらなかった。本国が世界中の売上を分析し、日本側の発注などお構いなしに(若干の参考値にはするが)Ship out (出荷)する。日本では、これをなんとか売り切ることが大命題なのだが、売れ残れば簿価でShip back (返品)すればよい。極めてフェアだ。だから、一件、在庫を押しつけられているように見えても、誰も文句をいわない。ルーチンになっているからだ。

  つまり、ブランドプラミアムによる価格も、広い意味でのマーケティングコストもすべて本国が持つため、各リージョンのミッションは、あてがわれた在庫を売り切る努力をやり、無理ならゼロコストで返品し最後は赤十字あたりに行くという、極めてフェアな分業が保たれていた。ある意味、ユニクロと同じ「売り減らし型」ビジネスなのである。ブランド力が強い、競争力があるということは、かくも有利にビジネスを展開できるのだ。

 オペレーション偏重主義も結構だが、日本のアパレル業界は本気でブランドとは何かという根源的で本質的な課題に取り組んでみてはどうかと思う。売れ残れば「換金する」ことが、キャッシュフロー経営だとばかりにマークダウンを繰り返し、残ったら償却損失をだす。P/L(損益計算書)しか読めないものだから、原価低減しか興味が無い。だから、トップ・メゾンのようにバッグや化粧品のような、ライトオフまでの期間が5年以上の安全在庫商品をメーンに扱うこともできないし、その発想もない。衣料品をSPAでつくって売り切ればタップリ儲かるから、という昔の方程式で、バッグや雑貨のように原価は高いが年々も売れる商品を売り切る方が利益が残るという計算さえしたこともない。一事が万事P/L重主義なのだ。

 この(本物の欧米流の)ブランドビジネスは、恐ろしいほどの利益を企業に与えることになる。私自身がリージョンGM (General Manager)に応募したことがあるから知っているのだが、GMクラスで年収が2~3000万円プラスボーナス、ホールディングのトップとなると、さらに六本木ヒルズなどのマンションがあてがわれ、5000万以上の金をもらっている。

Alexey Shatrov/istock
Alexey Shatrov/istock

 当然、社員も1000万クラスがゴロゴロいて、結果、そのビジネスのあまりの違いから、日本のアパレルから人が来る、あるいは、その逆になるということはなく、外資企業は外資企業の中で人が回流する。だから、こうした秘密は日本企業に漏れることはない。

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