ユニクロなどグローバルSPAと真逆の理由でSDGsを強化するスーパーブランド その隠された高収益の真実とは

河合 拓
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下代から積み上げる日本人にブランドが作れない理由

 こうした経験から、トップ・メゾンのブランドビジネスをきいて「イカサマ商売だ」という人がいるなら、そのブランド品を買った消費者の笑顔を見ればよい。高く売る方も、買う方も、双方ハッピーなのである。両方がハッピーなのだから何が悪いのかということだ。

 これが資本主義のルールだし、プライシングの基本的な考え方だ。売上代は、メーカーが決めるのでなくマーケットが決める。ボロボロになったデニムに20万円の値段がついてもおかしくない。欲しい人と売りたい人がいればマーケットは成立する。私たちは、コスト積上げ型プライシングの呪縛からのがれ、商品の面(つら)をみて、原価コストなど関係なく調達コスト、あるいは、製造コストを工夫するというリバース・エンジニアリングを学ばなければ、一生、欧米人からブランドと称して金をもぎ取られ、まじめにコツコツ働いていても、いつしか安価な模倣品で参入するアジアの製造業にコテンパにやられる。

 もはや、日本の製造業は、シャープしかり、東芝しかり、外圧の手を借りなければ、日本人の手では改革はできないし、アパレル産業に至っては総投入量の2%を切っている。

 CPAで顧客をデータベースにいれ、LTV(顧客生涯価値)で回収するなど、とんでもない話である。あなたの扱うブランドはランズエンドのような低価格衣料なのか、希少性とスタイルを訴求するブランド型なのか。ブランドのポジションによって、Acquisitionコストを初期投資とみるべきか、恒常的に発生する販管費と見るべきかによって、投資回収の考え方も全くことなるわけだ。欧米ブランドビジネスの広告料(ブランド維持料といってもよい)は、恒常的原価コストであると考えるべきであり、Acquisition (顧客獲得)でなく、品格を保つ(値引きをしない、恒常的に人目に触れるなど)コストと考えるべきなのだ。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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