ユニクロなどグローバルSPAと真逆の理由でSDGsを強化するスーパーブランド その隠された高収益の真実とは

河合 拓
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SDGsへの取り組みは、超ハイブランドと超ローブランド二択だけ

難民活動を支援するファーストリテイリング
難民活動を支援するファーストリテイリング

 ファッション誌をみれば、あちこちでSDGsへの取り組みが上げられているが、どれもスーパーブランドであることにお気づきだろうか。前述のマズロー欲求5段階説で説明されている通り、人は、まず自分が生きてゆくという基本的な欲求が満たされれば、社会に貢献したいと思い、さらに高次な欲求に昇華する。

 もっと平たくいおう。先週書いたDo Classe の創業者は、創業時「ペットフード通販に、当時めずらしかった高額通信販冊子を同送すれば富裕層に届く」と考え、同送カタログをしたそうだ。この分析は見事にあたり、当時からカタログ通販は安ものという固定概念を破り、同社の高額品を売るカタログはしっかり富裕層に配られたそうだ。そして、ランズエンドなどの経営をやっていたこともあり、もともと通販業務に明るかった同社は、高額肥料品通販という領域を開拓したのである

 「CPA(成果単価)が、、、」など、横文字を使う人は多いが、こうした相関性を見事に見抜き獲得コストを安価に抑えた手腕はさすがと言わざるを得ない。金がなければ知恵を使えということだろう。あえて言おう。自分の昔の経験でしか語れないコンサルと称する連中の口車に乗っECに参入。Amazonや楽天に滅多斬りにされたカタログ通販企業は後を絶たない。私は、それらの尻拭いを幾度もやった。もちろん、そんな話を信じる方も悪いが。Do Classeは、市場をしっかり見、自分で考え、常識とは逆張りのカタログ通販で勝負を挑み事業を拡大していった。さらに、ブランド化に至っては、代理店に頼むなどという古典的手法に頼らず、むしろリアル店舗こそ最高の広告塔であると考え、立地のよい場所にリアル店舗を出店しブランドを確立していった。

 その後の同社の躍進はいまさら書くまでもないが、 ここでいいたいことは、ハイブランドとは消費者も自我確立・維持欲求など遙か昔に満たされ、むしろ「社会的意味がある自分でありたい」と思う層に訴求をしているということでである。

 例えば、あるトップ・メゾンは、15年前から余った服を赤十字に寄付し、当時、アフリカなどに送っていた。日本でユニクロが猛威を振るっていた時期だったから、「日本人はユニクロしか買えないが、アフリカの難民はハイブランドを着ている」という冗談話をよく覚えている。

 これに対し、ユニクロやH&Mなど、世界規模で事業を展開する企業もSDGsへの取り組みは積極的に見えるが、上記に上げたトップ・メゾンとはやや事情が異なっている。彼らグローバルSPAの中心顧客は年収でいえば300万円程度。とても、社会活動にプレミアム料金を払う余裕などない。彼ら、彼女達の言葉を借りていわせていただければ、「安くてかわいければいい」ということになる。

 しかし、決算発表をしたファーストリテイリング柳井正会長兼社長にウイグル問題について記者たちがしつこく回答をもとめ、「2兆円の売上を支える社会責任」を追求する様をみると、ハイブランドとは違った事情が見えてくる。

 

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