ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”

千田直哉
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失敗を糧にした「g.u.(ジーユー)」

 ところが2006年に「ユニクロ」のセカンダリーラインとして登場した「g.u.(ジーユー)」事業だけは、赤字であっても耐え続けた。「g.u.」は、どうして撤退しなかったのだろうか?「これは本業だと思ったからです。一般的に、品質を追求しながらプライスを追求することはありえません。だからこそこれを実現できれば、低プライスのチェーン店には、ものすごい需要があると考えました。それで続けたのです。あれは本業です」(柳井さん)。

 「g.u.」の経営を任せたのは、「SKIP」事業で多額の損失をつくった柚木治さん(現社長)。「SKIP」失敗の責任を取るために柳井さんを訪ねた柚木さんに「これを10倍返しで返してくれ」と慰留した逸話は有名だ。柳井さんは「失敗は糧だ」と言う。「人間がほんとに勉強するのは失敗したときです。うまくいっているときは、全部、結果オーライですから。うまくいっていると、『やっぱ俺は能力あるんだな』って錯覚するわけです。誰もが。本当は大したことはないにもかかわらずです」。

 周知のように、“本業”は耐え続けるうちに、ようやく上昇カーブを描き始め、2009年8月期に黒字化。2020年8月期の売上収益は2460億円、事業利益228億円とコロナ禍の厳しい市況下でもしっかりと実績を残している。

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