百貨店、存在の証明その6 エイチ・ツー・オーが抱える“流通コングロマリット”の憂鬱

2019/11/11 05:30
森田俊一(流通ジャーナリスト)

エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府:以下、H2O)は、かねてより「関西ドミナント戦略」を掲げている。中核の阪急阪神百貨店(同)を始め、傘下の食品スーパーのイズミヤ(同)、さらに資本提携した関西スーパー(同)らの店舗網によって、関西地区で店舗密度を高め、投網をかけるかのように顧客の需要を吸い上げる戦略だ。ただ、かつてのダイエー、現在のセブン&アイ・ホールディングス(東京都)のように、百貨店を抱える流通コングロマリット企業の成功例はほとんど見られていない。

百貨店の足を引っ張る食品スーパー事業

 「お公家(の阪急百貨店)さんには、スーパーの経営はハードルが高いのではないか」

 2014年にH2Oがイズミヤと経営統合した際、ある大手小売業の幹部はこのような自説を披露した。

 両社の経営統合から約5年。確かに相乗効果が出ているとは言い難い状況だ。H2Oが公表した19年4~9月期決算では、好調なインバウンド需要を取り込み、百貨店事業が大きく伸長したものの、イズミヤ、阪急オアシスは赤字に沈んだ。イズミヤの営業損益は15億9000万円、阪急オアシスは約2億4000万円。相乗効果どころか、スーパー事業が百貨店の足を引っ張っている状態だ。

 関西ドミナント戦略のねらいは、阪急阪神百貨店の16店舗で「ハレの日」の需要を、イズミヤの85店舗、阪急オアシスの77店舗、さらに資本提携している関西スーパーの64店舗で日常づかいの需要を獲得するというもの。そして関西ドミナントの構築が完了でき次第、H2Oは海外戦略を推進するとしている。関西ドミナント戦略は、同社にとってこの30年間の長期的な経営方針の基盤を成す戦略といっていい。

 しかし、本オンラインでも取り上げてきたとおり、セブン&アイ・ホールディングスは祖業の総合スーパー(GMS)であるイトーヨーカ堂(東京都)のほか、百貨店のそごう・西武(東京都)を抱える流通コングロマリットではあるものの、それら2つの業態は長引く低迷から抜け出せていないのが現状だ。


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