百貨店、存在の証明その6 エイチ・ツー・オーが抱える“流通コングロマリット”の憂鬱

流通ジャーナリスト:森田 俊一
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「公家」と「武士」

 さらにいえば、いわゆる“百貨店系”の食品スーパーは軒並み低調だ。たとえば三越伊勢丹ホールディングス(東京都)は高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」をかれこれ30年以上も展開してきたが、「順調だったとはいえない」(ある百貨店幹部)し、17年に株式の過半数をファンドに売却。またJ.フロントリテイリング(東京都)も、かつて保有していた食品スーパーの「大丸ピーコック」をイオン(千葉県)に売却している。

 つまり、百貨店と食品スーパーは同じ小売業でありながら、カルチャーは決定的に違う。
「公家」と「武士」のように、一つ屋根の下にいてもなかなか相乗効果を生まず、融合もしにくいのである。

 だが、H2Oもそんなことは言っていられない状況だ。最大の課題は、関西ドミナントの一翼を担うイズミヤをいかに立て直すかであることに違いない。

 イズミヤの売上高は2182億円(19年2月期実績)。多聞に漏れず、課題は不振が続くGMS業態のテコ入れだ。食品スーパー業態の「デイリーカナート」の既存店売上高が対前年同期比1.8%減少だったのに対し、GMS業態は同3.4%の落ち込みとなっている(20年4~9月期実績)。

 こうした状況下、H2Oは20年度(21年3月期)以降、イズミヤの“解体的出直し”のプランを実行するとしている。具体的には、20年4月にイズミヤを事業セグメント別に3社に分割し、業務提携したココカラファインと合弁会社を立ち上げ、医薬品、化粧品、日用品部門を切り出す。衣料品や住居部門は、グループ会社のエイチ・ツー・オー商業開発に任せ、イズミヤはSMの運営とGMSの食品テナントを担う事業会社となる計画だ。

 イトーヨーカ堂の構造改革と同様に、イズミヤもGMSの直営面積を減らしてテナント化するなど、旧来のGMSの枠組みを変えることで活性化を図るとみられる。これが止血策になるかどうかは未知数だ。H2Oのイズミヤ改革は、苦戦相次ぐ“流通コングロマリット”の光明となるか――。

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