新業態の「高質食品専門館」が好調、今年度は「第2の創業」=阪食 千野和利 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──ねらっているのが「アッパーミドル」でも価格対応はしっかりやる。

千野 われわれが事業展開している京阪神のお客さまはすべて富裕層かと言われると、決してそうではありません。幅広い方がいらっしゃいますし、さらに現在の景況感を考えると、価格訴求は外せません。

 そのひとつとして取り組んでいるのが低価格対応のPB(プライベートブランド)「ハートフルデイズ」で、現在207アイテムほど開発しました。このように低価格を意識し、対応してはいるのですが、長いタームで考えると、優先順位は高くないと考えています。

──その一方、「専門性」、「ライブ感」、「情報発信」という3つのキーワードをもとにした売場づくりが他店との差別化になっています。

千野 国内における流通業の店を見ていると、低価格に集中しているため、ムダと思われる品目が削られています。以前は1万アイテムあった品揃えが、7000や6000アイテムになり、単品を量販するスタイルへシフトしています。しかし当社は違います。できる限りアイテム数を増やし、集積の面白さを楽しんでもらう方針です。もちろんすべての商品を置くのは不可能なので、マーケットに応じ、品目を選びます。たとえば、ワインやナチュラルチーズ、香辛料、お酢といった商品を戦略的に特化商品として位置づけるのです。

 生鮮食品は、もはや安全・安心は当たり前。さらに加工のバリエーションを増やし、できるだけ手を加えます。対面売場を設け、お客さまの目の前で商品をつくる、加工するプロセスを持ち込んだことが大きなポイントです。生鮮はそのままだと価格競争に陥りがちですが、手を加えることで、売場や商品に楽しさ、おいしさ、シズル感を出せるのです。

地域密着型の食ビジネス

──今後、新しいタイプの店舗をどのように広げていくのですか。

千野 「高質食品専門館」を基軸とした当社の事業展開は、10年4月、つまり今年度からすでに次の段階「パート2」に入っています。具体的には10年4月からの3年間で、新店を13~14店出します。

 当社の合計店舗数としては12年度(13年3月期)末には80店近くになる見込みです。既存店についても、これまで構築した「高質食品専門館」のノウハウを注入するかたちでリニューアルしていく計画です。まずは20億円以上の年商がある旗艦店舗から順次、南千里店、日生中央店、箕面店…と改装し、この3年間で約20店舗に水平展開します。

 とりわけこの7月1日改装オープンを計画している南千里店は、店舗売上、店舗面積、店舗デザイン、商品政策、環境対応(省エネ、CO2削減)等々、すべての面で当社のフラッグシップとする予定です。

 同時にポイントカードの発行枚数を積極的に増やします。現在、カードホルダーは78万人で、このうち稼働しているのは40万半ばです。これを、全体で100万人に増やしながら、稼働率を限りなく高めていきたいのです。もう少し詳しく言えば、「アッパーミドル」層の100万人の方々と末永くおつきあいしたいところです。

──末永くとは、どういう意味ですか。

千野 13年度からは、さらに次の段階「パート3」に入ります。「パート2」で獲得した100万人分のカード情報を詳しく分析、「パート3」からは市場占有率の向上をめざします。ドミナントエリアに出店しながら信頼関係を築き、それを背景に、幅広いビジネスを展開します。たとえば、ちょっとした出前から、健康を気にする方への低カロリー弁当、またパーティ料理の提供など、地域密着型のあらゆる食にまつわるビジネスを実践していきたいのです。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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