人時生産性を改善しながら付加価値のある売場をつくりだす=原信ナルスHD 原 和彦 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──現在の美沢店の課題は、どのようなことですか。

 美沢店では従来扱っていなかった高付加価値の商品を揃えています。しかし、従来と同じ売り方では、お客さまに買っていただけません。商品回転率が低く、ロスになる可能性も高い。今まで以上に手間ひまかけて、お客さまにアピールしていかなくてはなりません。

 また、生鮮部門ではプロセスセンターの稼働率を上げることを課題として取り組んでいます。通常ならば店内加工のオペレーションを減らした分、社員を少なくして経費削減を図るのが定石です。しかし、当社では余裕のできた分を付加価値のある売場づくりに割き、ノウハウを積み上げてきました。一方で、これからは生産性も重視しなければならないと考えています。

──売場では価格の打ち出しも目立っています。高付加価値と低価格をともに追求することは可能ですか。

 価格訴求も「ニューコンセプトパート2」の重要な要素です。単品で日本一の販売量をめざす取り組みを始めてから2年が経過しました。昨年6月からは低価格かつ品質のよい「パワーアイテム」を導入しています。1個20円のミルクパンや29円のコロッケ、68円のおにぎりなど定番商品で価格を打ち出しています。

 高付加価値と低価格の追求は「ニューコンセプトパート2」の両輪です。お買い得な商品がいつもある一方で、頻度が高くないけれども生活に密着した高付加価値の商品も提案する。われわれは高質さを追求するのではなく、あくまでふだん使いの食品スーパーを志向しています。たとえば、入口付近で展開している「カジュアルフラワーミックス」では198円の売価ラインで生花を揃えました。食卓を彩る生花を2週間に1回でも買っていただければ、晴れやかな気分を感じていただけるはずです。こうした気持ちは高質さではなく、豊かさであると思っています。

── 一方で原材料価格が上昇していますが、売価にはどのように反映させるのでしょうか。

 原材料の高騰はまさに世界的な潮流です。取引のあるメーカーさんには原材料の使用割合などを教えていただき、整合性のある値上げであれば受け入れざるを得ないでしょう。しかし、お客さまからの問い合わせが多いため、納得できる理由がなければ受け入れは難しいのが現状です。

──昨年2月から導入された生産性向上や売場改善の成功事例を全社で共有する「改善事例バンク」の活用状況はいかがですか。

 最近は売場の改善事例だけではなく、コスト削減や生産性の向上につながる事例が集まっています。しかし、同様の改善事例が後日、他の店舗からも挙がってくることがありました。本来ならば本部が標準化する手順をきちんと整えていれば、改善の必要がない項目も多く、本部の努力が足らないと痛感することもあります。こうした反省を生かして、本部の役割を見直しています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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