三越伊勢丹のデジタルシフトを推進! 百貨店らしい、デジタル子会社のアジャイル開発とは

太田美和子
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デジタルシフト推進役の新会社が誕生

ワークショップ
システム開発チームと百貨店メンバーが集ったワークショップの様子

 IMDLは三越伊勢丹HDの子会社として、1910月に設立された。その設立の背景には、17年に三越伊勢丹HDが打ち出した、デジタル時代に合わせたビジネスモデルの変革、デジタル関連の新事業の創出と、店頭とオンラインをシームレスにつなぐという経営方針がある。当時、ITソリューションを提供する三越伊勢丹システムソリューションズ(IMS)の代表だった三部氏は、グループ全体のデジタルシフトを推進する方法を思案した。「お客さまに近いところにいて現場をよく知る人たちとともに考えないと、よいサービスを創造できない」と考えていた三部氏は、グループ内にデジタル・サービスを開発する会社を設立するのが最善との結論に至る。システム開発の専門家と、百貨店の現場経験者から成る組織を作り上げることにした。

 設立準備と並行して、同年4月からひとつのプロジェクトに着手した。のちに「YourFIT 365」といわれる靴売場に対応したデジタル・サービスの開発である。

 当時、三越伊勢丹HDのデジタル戦略を担当していた河村明彦氏は婦人雑貨部門の出身で、3D計測器で読み取った顧客の足形をデータ化し、木型データと照合することで、顧客に合う靴を複数のブランドの中から絞り込み、最後の1足をスタイリストが提案するサービスをフロアマネージャー等と検討。河村氏をプロダクトオーナー(プロダクト責任者)に指名し、「YourFIT 365」の開発が始まった。ただし、伊勢丹新宿本店の大規模な改装に伴い同年828日にリニューアルオープンする婦人靴フロアに導入することになったため、完成を急がなければならなかった。

 まず、エンジニアやシステム開発の専門家が加わった開発チームに、百貨店のバイヤーやフロアマネジャー、スタイリストが集まって、ワークショップを開催。足形を計測したうえでのアイテム提案をスタンダードにすることを最終的なビジョンに決めた。時間が限られているため、靴の種類はパンプスに絞り、それを履きたい、もしくは履かなければならない人をターゲットにした。ビジョンと優先順位を共有したことで、それぞれがやるべきことが明確になった。

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