逆風下のマルエツ、総菜で反転攻勢へ!

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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 強い単品を育て、SKU拡大

 627日、マルエツは東京都新宿区に新店「江戸川橋店」をオープンした。東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅、東西線「神楽坂」駅から徒歩圏内にあり、周辺にはマンションやオフィスが立ち並ぶ好立地。売場面積は約370坪で、1階が出入口と駐車場、2階が売場となっており、いわゆる「ピロティタイプ」の構造だ。半径1km圏内にはマルエツのミニスーパー「マルエツプチ」が3店舗あり、それらを補完する「このエリアにおけるフラッグシップ的な位置付け」(古瀬社長)の店舗である。

マルエツ江戸川橋店
江戸川橋店の総菜売場。マルエツの総菜への本気度が伺える

 この江戸川橋店、マルエツの「総菜強化」の本気度を強く感じられる店舗となっている。総菜部門の売上高構成比は12.6%と同社としてはかなり高いことに加え、実際に売場を見てみると、とにかくSKUの豊富さが目を引く。

 たとえば、主通路上に設置した平台では、魚総菜と肉総菜を集積(江戸川橋店では双方とも総菜部門による調理)。このうち魚総菜は、魚介類のフライや塩焼き、煮付けなど、肉総菜は唐揚げやトンカツ、ローストチキンなどが並ぶ。古瀬社長がとくに推すのが、スーパーの総菜としては珍しい「牛もも肉の赤身ステーキ」。米国産牛肉の「イチボ」の部位を使い、赤身肉ならではの旨味と柔らかさが特徴だ。 

マルエツ総菜
スーパーの総菜では珍しいステーキも販売

 さらに、「洋風総菜」の括りでまとめられたコーナーでは、パプリカを丸々1個使用した「パプリカの肉詰め」(税抜398円)、「鶏胸肉のスチームチキン」(同398円)、「ラタトゥイユ」(同298円)のほか、総菜部門で焼き上げる薄型のピザ(同500円/1枚)などユニークな商品が並ぶ。

 弁当は、健康志向に応えた商品も多い。複数の商品で白米か雑穀米の2種類を選べるようになっているほか、話題のカリフラワーライスを使った商品、さらに、ご飯の量を抑えて主菜と野菜を充実させた「彩りベジ弁当」などを揃える。

 「こうした取り組みのなかで強い単品をつくり上げ、SKUを拡大していきたい」と古瀬社長は力を込める。

“三遊間”のサラダを主力商品に

  このほか、販売に力を入れているのが青果部門で店内加工するサラダで、青果売場だけでなく、総菜売場でも壁沿いの冷ケースを使って販売する。このうち、「フレッシュサラダ」「彩りツナ&コーンサラダ」「15品目のバランスサラダ」などベーシックな商品は小パックで98円と割安な価格で提供。そのほか、「こんにゃく麺」を使ったサラダや、カット野菜をふんだんにちりばめた「冷製スープ」など、さまざまな野菜の食べ方を提案している。

 古瀬社長は「サラダは青果と総菜の狭間にあった“三遊間”のような商品群で、マルエツはこういう商品が少し弱かった」と指摘。「たとえばマルエツプチで98円のフレッシュサラダを並べることができれば非常に大きい」(同)として、下期中にはマルエツプチを含め、全店で販売を開始する計画だという。

マルエツ総菜
サラダのバラエティも豊富

  高品質の生鮮食品を得意分野として成長を遂げてきたマルエツ。しかし社会環境や競争環境の変化による影響が、業績という具体的な数字で示された今、総菜のテコ入れを図ることで新たな成長軸をつくり出そうとしている。ライフやサミットといった強敵を前に、マルエツは総菜を新たな得意分野にできるか注目だ。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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