新中期計画は株主の期待に応えているか?好決算発表後、しまむら株価が下落した理由
新中期経営計画、株主目線で「物足りない」点とは
このように新中期経営計画2027はよく練られた攻めの計画であると思いますが、率直に言って物足りない点もあります。
特にROEの着地目標を8%とした点です。これは同社の目線ではおそらく保守的な必達目標として示しているのでしょうが、直近期実績8.8%に対して現状維持以下を意味しており残念でなりません。
実は、2010年から2013年ごろのROEは手元資料によれば12%前後ありました。まずは10%、その後12%越えという道筋を示して欲しかったと思います。
ちなみに直近の売上高営業利益率8.7%は当時の水準に遜色ありません。つまりROEの低下の主因は資産効率、資本効率低下にあるわけです。
しまむらの貸借対照表を眺めると、自己資本比率は2024年2月期88%、また資産側では現金および短期有価証券が総資産の50%を占めておりだぶついているように見えます。会社の想定通りに投資に積極姿勢をとり、配当性向を引き上げるとしても、筆者の試算では現金がまだ継続的に増えていくと思われます。
ちなみにマネックス・アクティビスト・マザーファンドが2024 年5月開催予定の第71期定時株主総会においてDOE5%(同社新中期経営計画2027では3.0%)を提案している模様です。
配当を増やすべきか、自社株買いが良いのかという点で当アクティビストとの見解は異なりますが、DOE3%よりも5%のほうが”投資の原資を確保しつつこれ以上現預金等を増やさない、ROEの分母の増加を抑制する”という筆者の希望に近いと思います。
ここで問われているのは脱デフレ時代のROEのあり方であり、
しまむらの株主総会のおける株主提案の行方は注目です。決算発表後に株価下落を見た株主はどのように投票するでしょうか。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、