いまや日本ブランドを超越!国潮ブームでも「ユニクロ」だけ中国で好調な理由とは
日本ブランドへの圧力高まる
一方、そんな中国でも化粧品市場は二ケタ成長で伸びている。そうなると、「安心、安全、おまけに円安」ということで、日本のメーカーが競争勝ちしているかと思いきや、実態は違っているという。海外からの化粧品輸入は昨対比で▲14%で落ち込んでいるとのこと。国潮政策(文化、アミューズメントなどの分野で中国製を見直そうという動き)による国民感情の変化によって、日本というブランドに対するアンチの風はよりいっそう厳しくなっている。
例えば、日本企業が中国でインフルエンサーを活用すると、そのインフルエンサーに対して「お前は日本の企業を手伝っているのか!」と、国全体で圧力がかかるほどだ。こうしたトレンドの中、日本では「プラスワン」といって、中国市場、中国生産を分散化させようという動きがあったが、今は、つい最近の事例で云えば、急速なEVシフトに取り残された三菱自動車が中国から完全撤退をするという動きも出ている。冷え込む日中関係のなかで、対中国ビジネスも冬の時代を迎えているかのようだ。
ユニクロ絶好調の本当の理由と無印良品のいま

そんな中、本稿でも紹介した中国版アマゾンといわれる、激安オンラインモールの「TEMU」はシェアをますます増やし、中国でも激安のポジションを維持したまま、売上は2ケタ増で推移といわれているようだ。(このあたりの中国の数字は信憑性にあやしいものがあるが、中国本土で発表されているものをそのまま掲載している)
一方のShein(シーイン)は、相変わらず中国人はその存在すらしらない状況は変わらないが、1つの気になる動きがあった。なんと、アリババのT-Mallにちらりと出店していたというのだ。テストマーケティングと思われるが、いよいよ世界規模で売上を増やすため、巨大な中国市場に全く出ないということはあり得ないと考えたのだろう。
私は、自身のネットワークで「それほど日本への風当たりが強いなら、なぜユニクロは強いのか?」と聞いてみた。その回答はおどろくべきものだった。
「中国の消費者達は、ユニクロに日本製というイメージを照らし合わせていない」というのだ。ユニクロはもはやZARAやForever 21のようなもので、ZARAが欧州、Forever 21が米国、ユニクロが日本など、その国籍がイメージ想起として前にでてこないのである。「ユニクロはユニクロだ」という意識で買っているのである。これこそ、ユニクロが多額の広告宣伝費をかけて中国はじめ世界でブランディングを強化している理由なのだ。真のグローバルブランドといえる存在に近づいているともいえる。
私は「では、無印良品(良品計画)はどうなんだ。無印は確か世界で唯一の上海ホテルを立上げたのではないか?それだけ中国では人気があるのではないか」と聞いてみた。ちなみに、前回韓国から来たアパレルの専門家は、無印はあまりに日本的、良い意味でも悪い意味でも日本の素材感を前面に打ち出し、内からの美を大事にする価値観を押しつけすぎている、とネガティブな発言をしていたことも付け加えた。
無印良品は、中国では「食品と雑貨の店」と見られているようで、「無印のアパレル」などという話を聞くと「違和感を覚える」人が多いとのことだ。しかも、その「味」があまり現地化されておらず苦戦をしているようなのだ。例えば、多くの中国人はコーヒーを飲むとき砂糖を山盛りにいれて甘すぎるぐらいの飲み方をするのは、中国に行った人はみな知っているだろう。しかし、無印のコーヒーはブラックだ。だから売れない。文化が違うのである。良品計画は23年8月期、中国事業の既存店売上高(+オンライン)は通期で2.7%増(前期は11.6%減)となり、コロナ禍での積極的な新規出店もあり大幅な増収営業増益を果たしている。既存店ベースではまだ完全復活とはいえない水準で、今後のさらなる巻き返しに期待したい。
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