ハニーズ復活の理由と高収益を支える、真似できない「生産の秘密」とは

河合 拓 (代表)
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ハニーズの不安材料と学ぶべき点

 このように、ハニーズは内戦が泥沼化するミャンマーにおいて、他のアパレルが納期の長期化でサプライチェーンを組めない状況に陥っている中、自社垂直統合により計画生産を行い、また、郊外を中心に店舗販売をしていることで、低い原価率(40~50%と想定される)を実現。それを背景に、低価格での販売が可能となり、消費者を誘引し成長しているというのが、ビジネスモデルである。

 このようにブルーオーシャン戦略を推し進めるハニーズだが、パンデミック以外に不安材料もある。一つはすでに指摘したように「EC化率が低い」ことだ。ECは、以前の論考に書いたように、売場ではなく決済手段になってゆく。10年ごとに顧客属性が変わるなかでは、明らかに時代遅れになっていく。また、同社は「売上の壁」を破るため、ファッション性を高めて都内の駅ビル・ファッションビルに攻めて行くと述べているが、この市場は、ユナイテッドアローズ、トゥモローランドなど好感度セレクトショップが並ぶ激戦区だ。当然、彼らの損金処理ルールはハニーズよりも厳しく、それを上代に転嫁しているために高価格になっているわけだが、ハニーズがこうしたメカニズムを知らずして下手に駅ビル・ファッションビルに出店すれば、不良在庫の山になるだろう。

 さて、本日、ハニーズから学んでほしいことは、企業は「値引きをするな」、「仕入れた商品はすべて売り切れ」の2つである。最近は、私もセール時期にもかかわらず値引きが少ないトレンドに、服の買い控えをしている。セールやポイントを過剰にやれば、顧客は戻るが一度値引き中毒になった顧客を戻すのは難しい。そうなると、期初のデザインと価格設定が極めて重要で、「コピー裏表、エアコン28度」など、非科学的なコストダウンでなく、P/LB/Sの立体的なお金の動きを考えて会社を運転する必要がある。安く買って高く売れば儲かる、というのは古い時代の考えなのだ。

 

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プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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