グループシナジー創出にセブン&アイとの連携強化……三井物産が描くリテール戦略のすべて

2023/01/06 05:55
下田健司
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長年にわたるセブン&アイとの提携関係

 三井物産の流通ビジネスにとって最も重要な顧客が、提携関係にあるセブン&アイだ。調達・販売機能や物流機能(常温・定温・チルド・冷凍の4温度帯)のほか、需要側の情報を基点にした調達・生産の管理、原材料(弁当・総菜の原料食材、包材、容器)の一元管理、店舗の発注情報を考慮した需要予測に基づく在庫管理、トレーサビリティ管理といった中間流通機能を長年にわたり提供してきた。

 具体的には、セブン&アイ傘下でコンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)に向けた食材・パッケージの供給、需給管理・トレーサビリティ管理などのサービス提なども行う。また、レジカウンターで販売するファストフード、飲料・酒類、レジ袋や容器などの消耗品を提供したり、商品開発サポートや需給管理などのベンダー事業も三井物産グループで手がけている。そのほかにも、常温・米飯・チルド・フローズンの4温度帯のセンターを運営するほか、幹線輸送から共同配送までを一元管理する全国の物流網を通じて物流システムを提供する。

 セブン-イレブンの国内事業だけでなく、海外事業でのサポートも行っている。中国では現地企業とともに重慶市でセブン-イレブン店舗を展開しているし、中国のセブン-イレブン向けの卸機能と物流サービスも提供する。米国においても、米国セブン-イレブン向けの食品・パッケージの供給を手がけるほか、米国セブン-イレブン向けにサンドイッチなどを供給する製造会社にも出資している。

 近年、提案力を高めているのが環境対応だ。オリジナル商品で使用する容器の環境配慮型素材の容器を供給するほか、需給管理機能を高めた食品ロス対策にも取り組む。

 セブン&アイとのビジネスは流通事業本部だけが担うわけではない。三井物産全社での取り組みにするために社内に協業タスクフォースを組成する。環境・SDGs、サプライチェーン最適化、グローバル、未来型サービスの4つのテーマを掲げ、三井物産のウェルネス、ICTといった事業本部とも連携し具体策を検討しているという。

 「セブン&アイさんとは、流通事業本部にとどまらない関係を構築していきたいと考えている。タスクフォースのテーマである、環境・SDGsではベーシックマテリアルズ本部、サプライチェーン最適化では食料本部といった具合に、全社をあげてセブン&アイさんの成長戦略の裏で機能を発揮していきたい」と松岡氏は話す。

 三井物産流通ホールディングスの売上規模は1兆5000億円。4社統合によるシナジー創出や三井物産リテールトレーディングとの連携した製造機能の強化により、調達力、提案力を高め取引拡大を図る。三井物産の流通事業の屋台骨を支えるセブン&アイ向けのビジネスは、小売との取引を拡大するうえで戦略的にいちだんと重みを増している。

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