1年で1兆円企業に、ECでZARAを圧倒する中国 Shein(シーイン)の秘密に迫る 原材料費・関税ゼロの衝撃!

河合 拓
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輸出入関税、無税化のカラクリ

さらに、恐るべきは、中国の輸出、および、米国の輸入関税の無税化である。実は、世界で繊維製品に関税をかけていない国はない。徐々に撤廃しているとはいえ、繊維、アパレル産業は、国の発展段階における初期段階の重要産業なのである。しかし、loopholeと呼ばれる税金の穴が存在する。例えば、中国のような共産主義国は一般的に外貨が国から出て行くことを嫌がり独自の関税を設けている。それは、外資系企業が中国で販売をする場合にかかる税金だ。このため、中国に出荷子会社をつくり中国から輸出をしているようにみせ無税にしている企業が多い。Sheinも本来中国で販売すればよいのだが、マーケティング的に「中国臭さ」を消すため、あえて輸出(外貨の流出)を両立させるため中国の国内販売をしていないのである。

さらに、米国の輸入税にしても、店頭へのバルク配送でなく、フェデックスなどの国際郵便を使った一般消費者への個別配送という小口貨物を使用。つまり「消費者が個人輸入する」という形をとっている。

broombergによると、米国輸入の個配(個人への配送)には輸入税がかからない抜け穴が存在する、と記載されている。例えば、無敵のZARAは店舗ごとにバルク配送をしており、また、その誰もが知っている名前によって、高額な輸入税をかけられているのだが、Sheinは無店舗であるがゆえ、無税となっているわけだ。これによりSheinとしてのコスト負担は米国学者によると「誰も追いつくことができない」ということになる。つまりSheinはオンラインによる2C(対個人)ビジネスにより、中国からの輸出税、米国への輸入税を逃れ、極めて安価なコスト構造と販管費を実現しているわけだ。

フェデックスなどの国際郵便は高額だと思い込み、中国での混載(小口貨物をまとめてコンテナーで配送する手法)を日本企業は採用しているが、ZARAをはじめ、国際郵便と包括契約をすることで、彼の地の一般消費者にダイレクトに低コストで配送することは世界では常識である。例えば、日本の商社はすでにこうしたことをやっている。

このSheinの恐ろしさは、原材料と貿易関税が無税になるという低コスト構造と、「中国臭さ」を消しインスタなどSNSを利用してZ世代に爆発的な支持を受けるも、われわれオジさんは誰もしらないというターゲティングが明確化された効率的なマーケティングが巧みに融合している点だ。

アメリカの投資家が列をなしてSheinに投資を行っている事情もよく分かる。今、ビジネスモデルがしっかりしていれば、金は湯水のように集まってくるのだ。

ちなみに、日本のDXが進まない理由として、「トップがデジタル音痴」「業務の標準化をやらない」という意見が判を押したようにでてくるが、私は技術と業務を連携したマーケティングから流通を一気通貫したビジネスモデル全体を描く力がないこと」が、DXが遅れる最大の原因ではないかと思う

その点Sheinは、マーケティング、流通、ものづくりの全てにデジタル技術を使い、また、それを業務の流れと見事に連携させている。これに対して、日本企業のDXは、すべてがバラバラで個別対応だ。

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