1年で1兆円企業に、ECでZARAを圧倒する中国 Shein(シーイン)の秘密に迫る 原材料費・関税ゼロの衝撃!

河合 拓
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Sheinのビジネスモデルは日本が原型か?

本論考をよみ、勘の良い方であれば「Sheinのビジネスモデルの原型は、20年前の日本にあった」と指摘するだろう。このSheinのビジネスモデルは、日本の渋谷カルチャーといわれる「マルキュー」ファッションと同じなのだ。

Sheinのビジネスモデルは、かつて一世を風靡したマルキューブランドのそれと類似している
Sheinのビジネスモデルは、かつて一世を風靡したマルキューブランドのそれと類似している

ここで、「マルキュー」のビジネスモデルを知らない若い世代を対象に、おさらいをしたい。「マルキュー」とは、渋谷109のギャルファッションである。エゴイスト、バロックジャパン、(今は無き)CECIL McBEEなど、日本だけでなく世界で評価されたセクシーカジュアル(本人達はアメリカンカジュアルと呼んでいる)マルキューファッションは、Sheinと全く同じビジネスモデルなのだ。

「マルキュー」ファッションは、店頭に立つカリスマ店員と呼ばれるギャルの頂点に立つ女子達が、その店員に憧れる消費者を接客し、感じ入ったファッションを韓国東大門の「残反」を使って、現地生産。ハンドキャリーで日本に持ち帰り渋谷109で売るというものだ。この「マルキュー」ビジネスが成功した要因は、まさに、販売員と消費者、生産者が同じ人格でブレがないということだ。私は当時の論考で盛んに、「サプライチェーンというのは、ITのソリューションの名前でなく、この『マルキュー』ビジネスを擬似的にシステムを使って成し遂げることであると述べていたことを思いだす。

この「マルキュー」ビジネスを、Sheinに当てはめれば、すべて説明がつく。カリスマ店員が感じた感覚を、Sheinはビッグデータアナリシスでやっているし、カリスマ定員の奇抜なファッションによるメディア露出は、今のSNSを使った動画配信と原理は同じだ。さらに、残反を使ったコストセービングからハンドキャリーによる個配など、私は、この謎に包まれたSheinのビジネスモデルの原型は、日本のマルキューにあるのではないかという仮説をもっている。考えてみれば、マルキュー文化の権化、バロックは中国企業になってしまったようだ。

我々は、もう一度、顧客起点のサプライチェーンとは何か、そして、デジタル技術は、こうした人がやれることを世界的に展開するなど、全体設計があってはじめて成し遂げられるという俯瞰力が必要であることをSheinから学ぶべきだろう。

次回は、こうした世の中の潮流の中で、以下にオールドエコノミーと化した企業が生き残るのか、その戦略について語りたい。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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