計算式不要!アパレル の資金繰りを助けるOTBの使い方実践講座
なぜ、アパレルが売上至上主義から抜けられないのかリアルな実態
前置きが長くなったが、このように、無理な計画に対して月別の投入量を制御するのが成熟経済下のOT
一例として、在庫過多で業績が悪化しているアパレルがあった。そこに私がExcelをつくり、売上が計画対比で未達の場合、仕入れた在庫を換金することを優先させるため、仕入れをロックする簡単なマクロ機能を搭載し、会社の仕入れ承認システムと連動させた。
おどろくことに、多くのMDが私のところにやってきて、「河合さん、なんですか、このExcelは。へんなパスワードがかかって仕入ができないようになっていて、なにをやってもパスワードがはずれないんですよ」と怒鳴り込んできたのだ。このMDをはじめ、私は5回もMDについて講義を行い、「売上計画は仕入れと連動している」、「したがって、売上が未達の場合、売れない在庫が残り、その場合、新規の仕入れをせず売れ残った在庫を優先的に換金せよ」と説明したのだが、講義のときは「そんなことは分かっているよ」とうそぶいていたMDが、実際の現場でのオペレーションになると、過剰在庫は放っておき、新規仕入れをして売上を追いかけようとしているわけだ。しかも、パスワードをなんとかはずそうと全力で努力をしてまでも、である。

これは、笑い話でもなんでもなく、人間というのは頭で分かっていても体はそのように動かない。だから、いくら「わかっているよ」という顔をしても、デスクにもどって仕事をすれば、今までと同じように過剰仕入れをして売上をつくろうとする。この企業はまともに在庫の評価をやっておらず、神風が吹いて利益がでたら溜まった在庫を適当な範囲で償却しPLを飾る。あるいは、催事(さいじ)といって、大きな会場を借り、溜まりにたまった在庫を叩き売る。それまで、細かく在庫評価減をしているので、在庫簿価は恐ろしく低くなっており半額以下で売っても利益がでるのだ。これは、決算操作ではないかと何度もいったのだが、会計士の先生がよいといっていると聞かない。これが、アパレル個別企業が余剰在庫を生み出す実態だ。
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