計算式不要!アパレル の資金繰りを助けるOTBの使い方実践講座

河合 拓
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ブランド力がある企業の仕入れ予算の立て方

 それでは、実務家のために、実務に沿ってOTBの活用方法を解説していこう。

 まず、あなたがマーチャンダイザー(MD)だとしよう。「お上」(会社の上層部)から「来年のFW(秋冬)の売上は、1億円で頼む」と言われたとする。その際、秋冬が始まるのが9月で、販売時期が終了するのが2月だったとする。

  さて、この9月から2月までの半年間の間の過去の月別売上を見ながら、そして、可能であれば週次で26週の売上計画を立てることになる。当然、過去26週の売上合計をみれば、1億円には届かず7000万円だったとする。

 この場合のあなたは以下のような手順で仕入れ計画を進める。

 まず週ごとに売上動向を横軸で見て、アップダウンを見つける。ここで、ダウン(谷)をあげることで売上を平準化しようとし、売上が谷の部分にプロモーション(その多くがポイントダブルなど、実質値引き施策が多い)を組む。その後は、神のみぞ知るという感じでエイやと売上予算を立てるのだ。

  次に、横軸の売上を、どの商品で達成するのかを決めるために、縦軸にアイテムを並べる。アイテムごとのアップダウンは、これまた過去の商品の売上動向から指数化し、数種類のアイテムを並べ、アイテムごとの売上指数をみながら投入量を決めてゆく。

  なお、このやりかたは本質的に欠陥を孕んでいる(例えば、同じパンツでもデザインや色によって売れる売れないが決まる)わけだが、ここでは深くは触れないことにしよう。

 このとき、MDの頭の中には、

売上=商品平均単価 × 投入数量

 という公式が浮かんでいる。

 このように、売上計画という「数字の世界」が、商品計画という「商品の世界」に変換される。この商品の投入計画によって、想定される売上が決まるわけだが、商品ごとにリードタイムが3ヶ月のものもあれば、1ヶ月のものもある。商品リードタイムのボトルネックは素材だから、その素材がすぐに仕入れ可能か、あるいは、備蓄しているかによってリードタイムが決まる。こうして、売上計画から商品投入計画、そして、素材特性による商品発注計画と商品仕入れ計画が決まることになる。発注計画と仕入れ計画の時間差は、生産リードタイムと理解すれば分かりやすい。

  これは、ブランドが強く商品力の高いアパレル企業が採用する典型的手法である。このように、ブランドが強い企業のMD計画は全体像を固め、センター倉庫に商品を投入後にDB(ディストリビュータ)が、各店舗の「売る力」にあわせて、可能な限り仕入れた商品をプロパーで販売できる配分を決めてアソートを組むわけだ。

ブランド力が弱い企業の仕入れ予算の立て方

 これに対し、ブランド力がない企業の場合、MDの組み立ての初期段階で綿密にすることでMD精度を高めようとし、トータルの売上計画を週次に直す際に、店舗売上にブレークダウンさせる。そして、売上予算がマイナス30%だった場合、過去実績の低い店舗の予算を積み増しし、檄を飛ばす、あるいは、売上が比較的好調な店に予算を上乗せすることもあるが、それはMDの個性に依存する。さらに、恒常的に売上の減少が続く企業の場合、出店で売上の埋め合わせをしようとする。なぜなら、彼らの頭には、

 売上=店舗平均売上 × 店舗

 という公式があるからだ。

 こうして、売上至上主義の名の下、赤字店舗が放置される、あるいは、貢献利益がほとんどない店舗が雨後の竹の子のように出店されることになるのだ。こうした企業がなんらかの理由でECを拡大すれば即死する。なぜなら、貢献利益ベースでプラスでも、営業利益ベースでマイナス店舗がECに置き換われば「売る力」が露呈し一気に固定費がダイレクトに企業にのしかかるからだ。企業買収を計画している金融機関のために解説すれば、パッと見て異常なほど店舗数が多い企業は今後生き残ることはない。書籍風にいわせれば「死ぬアパレル」である。

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