主役は「店」と「部門」 現場目線の改革で「強い店」をつくるための方法とは

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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強いスーパー大

新型コロナウイルス(コロナ)の感染拡大が依然として続くなか、内食需要や巣ごもり需要の高まりから、食品スーパー(SM)業界は総じて好業績に沸いている。しかし、安定した売上・利益を上げられている今だからこそ、コロナ後の世界でも成長し続ける「強いSM」の構築のために動いておきたい。そのためには、全社的な経営戦略を遂行するだけでなく、個店ごと、部門ごとに「強い店づくり」を意識する必要がある。そもそも「強いSM」とはどういった店なのか? 強いSMをつくるために、各店、各部門はどのようなことに取り組むべきなのか?主要8部門のほか、「販促」「店舗オペレーション」「競合調査」などさまざまな切り口で、その道の専門家に徹底解説してもらった。

コロナは積年の課題を解決してはくれない

 新型コロナウイルス(コロナ)の感染拡大が国内で本格化してから、早くも1年が経とうとしている。状況が長期化の様相を呈する一方、食品という生活必需品を扱う食品スーパー(SM)は、コロナ禍で軒並み業績を伸ばしていることは周知のとおりだ。

 しかし、そうした“コロナ特需”に慢心してはいられない。なぜなら、コロナ禍は消費者のSMに対する需要を一時的に伸ばしただけであり、SM業界が長年抱えていた課題を解決してくれるわけではないからだ。

 仮にコロナが収束したとして、そのときにSM業界を待っているのは「ボーダレスな競争激化」「慢性的な人手不足」「多様化する顧客ニーズへの対応」など、かねて山積みになっていた問題の数々である。むしろ、人々の生活様式が大きく変わり、それが“コロナ後”の世界でもある程度定着するとみられているなか、SMが攻略すべきミッションは増えたのかもしれない。

 しかし逆に言えば、今のうちにそうした問題とあらためて対峙し、具体的な方策を考え実行に移しておく──つまり、「コロナ後の世界でも『強いSM』」の像を描き、それに向けた取り組みに今、着手するかしないかが、将来の命運を左右するだろう。

強い部門の“集合体”が強いSMの前提条件

 では、強いSMとは何だろうか?

 それは、その企業が掲げる経営戦略が、各店舗でそのとおりに具現化され、個店ごとに見た場合も各部門のレベルや意思が統一された状態にあることだ。たとえば「満足感のある買物体験を提供する」ことをめざした場合、各店舗、各部門で、顧客のニーズに沿った品揃えや売り方、見せ方、提案を行い、それを日々、維持・向上できていることが、「強いSM」の条件だろう。企業の経営戦略を、店舗という「現場の視点」に置き換えて、具現化することがカギになる。

 そのために今一度、部門ごとに「強い店の創造」を意識した売場づくり、品揃え、商品提案を考えておきたい。たとえば多くのSMで集客部門に位置づけている青果であれば、地域いちばんの鮮度と手頃な価格を両立しながら、集客力と単価をさらにアップさせる。精肉はより専門性を追求し、肉総菜やオーガニック商材など新たなジャンルの深掘りも必要だ。鮮魚はコロナ特需を追い風に受けながら、担当者のスキルアップを図り、必要とされる商品をしっかりと扱うことで、「廃棄ロス」も低減させたい。とにかく、各部門がさらに力をつけ、強い部門の“集合体”になることが、強いSMの前提条件なのである。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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