ZARAが実践、知らぬは日本企業だけ…アパレルの新常識「リードタイムは長くて良い」

2021/02/02 05:55
河合 拓

論理力が弱いと言われるアパレル業界。論理力が最も必要とされる分析力とは、渾然一体となった曖昧模糊とした事象をしっかり分類し、意味ある塊にする力をいう。今日は、まことしやかに言われている「リードタイムは短いことはよいことだ」という過った常識に切り込む。

Robert Way/istock
Robert Way/istock

現場を知らないベンダーと経営者の勘違い

 あなたがもしアパレル業界で働いているなら、「リードタイムが短くなることで消化率が上がる」という殺し文句をデジタルベンダーやコンサルタントから幾度も聞き、「そりゃそうだ」、とうなずいていることだろう。しかし、これは大きな誤解である。

 まずは、現場で何が起きているのか、大手アパレル企業の分析結果を解説していこう。

 この企業は、MDの初期投入で総投入量の40%を生産し、残りの60%を店頭の売れ行きをみながら、売れる商品を作り増しし、売れない商品は生産をストップすることで欠品と余剰在庫の最小化を図ろうとしていた。

 だがこれは、商社や工場側から見れば、いきなり「これを3週間でつくって納めてくれ。サンプルは初期投入であげたものと同じだから確認は抜き取り(量産品から数枚を抜いて納品前に確認をするスピード手法) 2枚で良い」などといわれ、ドタバタ騒ぎが始まることになる。

 日本のアパレル企業が弱体化し、中国の経済発展が進んだため、中国での生産はコストがあわなくなり、いまや中国生産は「贅沢品」だ。

 加えて、わずかに残っている素材メーカーも、素材をランニング(在庫しておくこと)しておく余裕などないから「もう素材はありません」ということになり、ムリを押しつけられた商社は、ありとあらゆるネットワークを使って似寄り素材を探すことになる。さらに悲劇は、「売れ筋商品」はおおよそ同じ工場に投入されているので、他のアパレルもこぞって似たような商品のクイック追加投入を押し込みに入るという点だ。結果、今度は縫製工場が「もう、うちにはキャパがありません」ということになる。

 工場が代われば、仕上がる商品も変わるのは常識だ。全く違う商品が出てきたら大変なことになる。しかし、3週間で商品を納めなければならないし納められなければ、次から商売はこなくなる。たちの悪いアパレル企業は、「約定は入れただろう」と一方的な通達を、あたかも契約が履行されたかの如く吹聴し、ノンデリ(商品が納期通り入らないこと)の責任を「上代保証」といって、売上損失のクレームを商社や工場に押しつけることもある。

 

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