ZOZOグループ入りわずか3年で上場!突然変異アパレル、yutoriは何が新しいのか?

河合 拓 (代表)
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yutori、唯一の弱点とは

 ただし懸念点もある。社長が30歳で社員が2030代のファッション好きということで、企業規模拡大するにつれて必要になる「ビジネスリテラシー」が追いつくかどうかは未知数だという点だ。

 勢いのある会社だからこそ、時には「歯止め」を掛けられるビジネスのプロが必要になってくる。逆に言えば、ビジネスのプロが入ることで、yutoriは日本を代表するアパレル企業になる可能性も高いだろう。

 なにしろ、ビジネスモデルが新しく、無駄がないことが最大の強みだ。3年以上前に傘下に収めたZOZOの慧眼ともいえるだろう。

 yutoriは、1ブランドを年商100億円まで育てることに興味は無いという。むしろ、小さくても「熱量」があるブランドを複数持つことが大事だという考え方だが、「市場」がそれを許さないだろう。あと5年もすればZ世代が中心購買層になり、購買パワーもついてくる。結果的に1ブランドで100億〜200億円のブランドが生まれることは想像に難くない。

 一方、同社が主張するように小さいブランドをたくさん持つというのは、非常に理にかなっている。今、世の中のマーケティングセグメンテーションはデジタルによって細分化されSNSでつながっているからだ。

 私のような「AKB48が全員同じ顔に見える」的おじさんが、経営の舵を握っているようではダメだ。私たちがみて同じに見えても、その中の「違い」がはっきり分かっている若い人がファッション業界では必要とされている。

 今、ファッション業界は、数値やKPI、デジタル偏重により、業績は大きく沈まない代わりに成長もしない状態になっている。その要因は、企画力が弱体化しているからだ。一方yutoriが手掛けるブランドは、それぞれ強烈な顔を持っており若者への訴求力も高い。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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