ウォルマートのビジネスモデルは全世界で通用する=西友兼ウォルマートジャパンCEO

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:中村麻里
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eコマース強化に向けウェブサイトを刷新

──競合となるのは実店舗を持つ小売業だけではありません。最近オンライン小売業ではアマゾン(Amazon.com)が台頭してきています。西友はeコマースを強化していくということですが、具体的にはどのような取り組みを考えていますか。

デイカス 小売市場ではeコマースも存在感を増しています。消費者の購買行動の変化を見れば、eコマースが急速に浸透していることは明らかです。ですから、新規出店によって実店舗を増やすほうがいいのか、それとも既存店の効率性を改善してeコマースを充実させるほうがいいのか、考える必要があります。

 まず、小売業がオンライン市場に参入することが重要だと考えています。アマゾンはすでに小売業にとっての競合となっています。当社にとってもオンライン販売の拡大は急務です。

 ウォルマート全体としてもオンライン販売を主要戦略と考えています。次世代はオンライン中心で、既存の実店舗だけでは生き残れないと考えているからです。ウォルマートはあらゆる進出市場で勝者になるために、この変化に対応しようと努力しています。

 当社はネットスーパーの売上が対前年比50%増で推移しており、これは順調と見てよいでしょう。今年はディー・エヌ・エー(東京都/守安功社長)のサポートのもと、新しいeコマースのサイトを立ち上げ、全国どこからでも注文できるように準備しています。

──アマゾンは物流が簡素化されており、日本の場合は全国12カ所の物流センターから直接個人宅に配送しようとしています。一方、従来型の小売業の場合は、メーカーから消費者に商品が届くまでに最低でも数日はかかります。物流面では何か対抗策はあるのでしょうか。

デイカス アメリカやイギリスなどの他国でもやっていますが、補充センターを持つことがカギになると思います。当社でも補充センターを立ち上げて倉庫から直接、消費者に配送できるようにします。

 ただし、これはどこの会社にも言えることですが、生鮮食品をどう扱うかが課題です。当社は実店舗がありますので短期的には既存のeコマース企業に対して優位性があります。しかし、長期的に勝つためには、全国規模で見て、生鮮食品をいかに効率的に補充センターから配送できるかという問題を解決する必要があります。

 また、既存のeコマース企業が生鮮には参入しないと考えるのは大間違いです。当社はそれを想定して準備をしています。

 消費者の購買行動を変えるのは難しいことですが、ひとたびそれが変わってしまうと元には戻せません。「消費者はオンラインでは生鮮を買わない」と考えている向きもありますが、それは間違っています。当社におけるお客さまの購買行動を見ても、ここ数年で生鮮をオンラインで購入する人が増えています。そして、一度変化が起こってしまうと、それを戻すことはできません。

 オンラインで食品を購入する動きが広がる中で、当社のPB商品は既存のeコマース企業などの競合対策として効果があると思います。オンラインは店頭よりも価格比較がしやすいので、EDLPの強さがより効くはずです。eコマースが今、急成長している要因の一つには、価格比較のしやすさがあると思っています。

──実店舗とオンライン店舗をつなぎ、お客がどこからでも買物できるようにする「オムニチャネル」というトレンドがありますが、これに対して西友はどのようなアプローチをしていきますか。

デイカス 商品の買い方は、お客さまが選びます。オンラインでも実店舗でも、最安値で最高の買物体験を提供することをめざしています。この2つのチャネルは補完的な関係性です。日ごろから当社の実店舗を利用しているお客さまが、オンライン店舗も利用している。また、実店舗があるからこそ生鮮食品の配送ができています。両方のチャネルが当社にとって重要ですので、いずれも投資を続けます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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