楽天から離れ、西友のネットスーパー事業は単独の店舗出荷型へ その戦略とは

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楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長:以下、楽天)と共同で展開してきた西友(東京都/大久保恒夫CEO)のネットスーパーが大きく方針転換する。ネットスーパーの運営形態を店舗出荷型と倉庫出荷型を組み合わせた「ハイブリッド型」から、店舗出荷型に切り替える。「ネットスーパーで業界ナンバーワン」をめざす、西友の新ネットスーパー戦略を取材した。

西友実店舗を「OMOサービスの拠点」に

 西友は2018年4月に楽天と合弁で楽天西友ネットスーパー(東京都/盧誠錫社長)を設立し、ネットスーパー事業を共同で運営してきた。西友の実店舗を起点とする店舗出荷型と、3カ所の物流センターから出荷する倉庫出荷型による、ハイブリッド型ネットスーパーを展開し、流通総額は年々順調に拡大してきた。

「楽天西友ネットスーパー」
西友は、ネットスーパーの運営形態を店舗出荷型と倉庫出荷型を組み合わせた「ハイブリッド型」から、店舗出荷型に切り替える。この変更に伴い。「楽天西友ネットスーパー」というサービス名称も変更される予定だ

 西友、楽天の両社は23年12月、楽天西友ネットスーパーを楽天の完全子会社とすることで合意した。楽天西友ネットスーパーは楽天の傘下で倉庫出荷型ネットスーパーの運営を継続し、西友は店舗出荷型ネットスーパーを単独で運営する体制へと約1年かけて移行していく。運営形態の変更に伴って、楽天の西友ネットスーパーの社名、両サービスの名称の変更を予定しているほか、ウェブサイトやスマホアプリもこれまでの連続性を担保しながら必要に応じて変更するという。

 中長期視点で大規模な先行投資を実行し、事業成長をめざす倉庫出荷型ネットスーパーは、事業規模や時間軸、ビジネスモデルの観点で、店舗出荷型ネットスーパーと本質的に異なる。今回の運営形態の変更により、倉庫出荷型ネットスーパーは楽天の「対アマゾン戦略」のもとで収益性の向上をめざす一方、西友は店舗出荷型ネットスーパーへの投資にフォーカスして事業規模の拡大を図っていくこととなる。

武田正樹氏
西友執行役員経営企画本部長の武田正樹氏

 西友執行役員経営企画本部長の武田正樹氏は「『西友が身近にあるしあわせ』という西友のミッションに立ち返り、実店舗のあり方を『OMOサービスの拠点』と再定義したうえで、実店舗商圏のお客さまに対して、実店舗とオンラインが融合した利便性の高いサービスを提供していきたい」と今後の構想を明かす。

 国内では、人口減少や少子高齢化に伴って、実店舗の稼働率や投資効率が全体的に低下傾向にある。武田氏は「実店舗を『OMOサービスの拠点』と定義し直すことで、実店舗の資産効率や持続性を高められる」と見通し、「西友がこの構想をうまく成功させ、業界全体の方向性も変えたい」と食品小売業界にも波及させていく考えを示す。

 なお、西友では21年末の中期経営計画骨子の発表時に、25年度までに「流通総額(西友の店頭売上と楽天西友ネットスーパーの売上合計)を現状から+1000億円という数値目標を掲げているが、今回の体制変更により、今後はネットスーパーの営業利益で業界ナンバーワンをめざすとしている。

黒字化店舗9割超! 利益確保のポイントは?

 西友は

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ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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