高齢社会を追い風に変え、「健康屋」で成長カーブを描く=ウエルシアHD 高田隆右 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──しかしながら、将来的に調剤は薬価(医療用医薬品の公定価格)改定の問題があり、今後、調剤部門では利益を出せなくなっていくという予想もあります。

高田 そうです。日本の医療費が約37兆円であり、高齢化の進展にともない、さらに増加が見込まれます。しかも、日本の財政は火の車ということであれば、国は医療費補助負担額を軽減させるために薬価をどんどん切り下げるでしょう。

 すると、調剤部門の利益は減少し、ビジネスとしては成立しにくくなっていくはずです。その中で、戦線離脱する企業も増えていくでしょう。

 ただ、私は、その潮目の変化がチャンスだと考えています。

 高齢化や財政赤字増加によって、“利益を生まない処方せん”を持参するお客さまは加速度的に増えるものと予測できます。しかし、違う目線で見れば、そのお客さまたちは、健康ケアの問題意識を旺盛に持っている前向きな方々であるのです。

 その方々の受け皿としての役割を当社が果たすことができれば、大きなビジネスチャンスが広がると考えます。だから薬剤師を大量に採用したいと考えています。

ウエルシアホールディングス

──調剤部門が利益を生み出しにくくなる中で、どこに大きなビジネスチャンスを見出しているのですか?

高田 調剤だけでも、多少なりとも利益を見込むことができますので、お客さまとの信頼関係をベースに「かかりつけ薬局」として、そのお客さまの長寿、健康な生活に向けての提案をいろいろとさせていただきたい。併設調剤のメリットはそこにあると考えています。

 今のところ当社は、何でも販売している「何でも屋」に見えるかもしれません。

 しかしながら、将来的には徐々に「健康屋」に変えていきたいと考えています。これまで日本の流通業界は、業態論を中心に推移してきましたが、もう一度、「業種は何であるのか?」が問われるようになる気がします。「自社が何屋なのか」を明確にして存在意義を明らかにすることが求められる時期に来ているからです。「健康屋」は調剤のみを扱っている薬局とは明らかに異なりますので、大きな差別化要素になります。

 ただし、介護事業については、見え切れていない部分がありますので、全身全霊で参加するということはありません。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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