松本忠久社長が語る、ウエルシアが調剤のデジタル化を進める理由

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ウエルシアホールディングス(東京都)の2022年2月期(連結)業績は、売上高は対前期比8.0%増の1兆259億円、営業利益は同0.1%増の430億円、経常利益は同3.9%増の475億円、当期純利益は同5.5%減の264億円だった。決算説明会における松本忠久社長の発言を抄録する。

ウエルシアホールディングスの松本忠久社長

第3四半期以降の人件費はほぼ計画どおりに進ちょく

 松本社長 22年2月期上期は前期(21年2月期)の下期に採用を強化した調剤部門の人件費伸長があるなか、“コロナ特需”反動減の影響が収まってくるとみていた下期計画に対し、第3四半期以降は感染症対策商品の反動減が継続した影響で、季節品が不調だった。22年1月からはオミクロン株の感染拡大の影響があり、エネルギー価格や原材料価格の高騰による物価上昇など、結果として厳しい経営のかじ取りを迫られた。そのような状況において、お客さまのニーズや消費行動はコロナ感染を避けるためにリアル店舗での買い回りが減り、EC化率がさらに高まるなど、変化が加速したものとみている。

 22年2月期はお客さまニーズや消費行動が変化するなか、調剤併設の加速、PCR等無料検査への対応、またデジタル販促との連動を可能とするための顧客管理「ウエルシアメンバー」の獲得など、将来の成長につながる取り組みを積極的に行った。21年12月にはププレひまわり(広島県)を子会社化し、エリア戦略の展開を推し進めた。これらププレひまわりの子会社化、PCR等無料検査などを含め、売上高は増収となり、計画を達成した。

 売上総利益については、物販はププレひまわり子会社化やPCR等無料検査への対応により押し上がったものの、コロナ感染症対策商品の反動減によって計画は未達成となった。また調剤は21年4月に薬価改定があった一方で、調剤併設の推進や受診抑制の解消と長期処方の戻しにより、また薬価交渉の妥結が想定以上だったことから、調剤粗利益が物販粗利益の不足をカバーしたかたちとなり、全体では対計画比0.9%増と計画を達成した。

 販売費および一般管理費(販管費)は、継続課題である業務効率化に向けた取り組みの徹底による収益力改善については従来の取り組みに加えて、下期からスタートした一括モデル設定の活用により、自動発注の稼働率向上やワークマネジメントシステムによるワークスケジュールの“見える化”に努めた。結果として、第3四半期以降の人件費はほぼ計画どおりに進ちょくした。販管費全体は対計画比1.5%増と計画を超過した。以上の結果、計画に対して営業利益は同2.9%減、経常利益は計画どおり、当期純利益は同2.0%減の着地となった。

調剤のデジタル化を大きく進める1年

 松本社長 当社は23年2月期より新収益認識基準を適用する。新基準による計画は、売上高1兆1100億円、経常利益516億円となる見通しだ。旧基準では増収・増益の計画となる。既存店売上高は旧基準で対前期比3.4%増、うち物販は同2.1%増、調剤は9.0%増を見込む。新規出店は129店舗、薬局の新規開局152店舗、既存店の大型改装85店舗と、積極的な投資を継続する。

 中期計画ではより早く決断、実行できる体制を構築するため、事業会社およびウエルシア薬局(東京都)の支社において、営業・調剤・化粧品の“三位一体”体制を整えてきた。今期はコロナ禍で影響を受けている化粧品、医薬品部門活性化のため業務効率化に向けた取り組みの徹底と、収益力改善の一環としてデジタル接客ツールを使って、お客さまに寄り添ったカウンセリングを実現していく。

 前期に導入したオンライン資格確認システムの活用による患者さま情報の閲覧や、23年1月に開始見込みの電子処方せんなど、調剤のデジタル化を大きく進める1年となる。服薬後のフォローや在宅医療への対応など薬剤師の対人業務を強化するため、機械化、調剤事務の活用、専門教育を継続して進める。

 商品面ではプライベートブランド(PB )「からだWelcia」「くらしWelcia」の開発を引き続き進めていくとともに、イオン(千葉県)のPB『トップバリュ』などを含めて拡売をめざす。また、現在、生鮮食品を含む食品強化型のプロトタイプモデルを福井県と千葉県で実験している。経営資源を活用し、各エリア特性に沿ったフォーマットを完成させていく。

記事執筆者

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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