高齢社会を追い風に変え、「健康屋」で成長カーブを描く=ウエルシアHD 高田隆右 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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カウンセリングセールスに注力

──ウエルシアHDの大きな特徴は売上総利益率(≒粗利益率)が29.5%と高いことにあります。

高田 そうですね。その理由の1つは売上高構成比の24.2%を占める医薬品の粗利益率が39.9%と高いからです。調剤(粗利益率34.4%)、化粧品(同32.6%)は同業他社との比較ではそれほど変わらないのですが、医薬品はドラッグストア企業の特徴がはっきり表れる部門です。

 そのことを踏まえて言えば、当社の特徴はカウンセリングセールをしっかり提供しているということです。もともとカウンセリングセールスは化粧品をベースに考案したビジネスモデルですが、現在は全部門に波及しています。手間はかかりますが、利益率も大きいのです。

 私は、これからの時代はセルフサービスではなく、一人ひとりのお客さまと対面する時代だと考えています。お客さまに対して親切に大切に応対することによって信頼を得てお客さまを増やしていきたい。

 たとえば、ネットビジネスに関しても同じことが言えます。高齢化によって、店舗に行かない、行けない人たちに対して、1対1で対話ができ、カウンセリングができるようなツールとしてネットを使っていきたい。もちろん、ターゲットは「団塊の世代」です。

 ネットビジネスというと、今の主流は、若者に焦点を当てたものになりますが、私たちは高齢社会の中で利用してもらう道具にしたいと考えているのです。

 その意味からも、双方向のネットでなければ意味はありません。新しい時代が到来しているのですから、旧来と同じことをしていても仕方がありません。

調剤強化にビジネスチャンス

──そうしたビジネスモデルであるならば、人材の育成は大きな課題になってきます。

高田 現状の教育は、統一してやるべき内容はウエルシアHDで一括して実施しています。一方で、各事業会社の社風から来る人材育成もとても重要だと考えていますので、それ以外の部分については個別に進めています。

 ドラッグストアは、ナショナルチェーンで成功できる業態だとは認識していません。お客さまがドラッグストアに望んでいるのは、地域に根付いている安心感だと考えているからです。ですから、各事業会社の個性は非常に尊重しています。

──もう1つ。調剤併設というビジネスモデルの中では、薬剤師の確保は火急の課題です。

高田 そのとおりです。健康や医療の分野で地域のお客さまからの信頼を獲得していくには、調剤薬局を併設して、薬剤師を常駐させる必要があるからです。

 私どもは、東京証券取引所第1部上場のウエルシアHDを窓口として、待遇面のよさを訴求しながら新卒の採用活動にあたっており、学生さんからの評判もすこぶるよい。

 一方、薬科大学も6年制に制度が変わったことで学生の質がずいぶんと良化しているように思えます。これまでは、薬剤師免許を持っていれば誰でも採用せざるをえなかったような窮状でしたが、今後はこの部分も変わっていくのかなと感じています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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