家丸ごと一戸へのソリューションを提供する=ヤマダ電機社長兼COO 一宮忠男

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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トイレットペーパーから一戸建てまで

──12年6月には、米フェイスブックと連携して、「ヤマダ電機マルチSNS」を立ち上げ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス:交流サイト)にも参入しました。

一宮 そうです。ネットは万能薬ではありません。ネットにはネットの特性があり、そのいちばんはコミュニケーションだと思います。それがサイトを立ち上げた理由です。

 現在、スマートテレビが普及していますが、ネットにつながれているのはまだ7%に過ぎません。これを年間1000万軒以上の配達・設置・工事等のサービスでお客さま宅を訪問する際に設定し、「ヤマダ電機マルチSNS」の会員になっていただくことも可能です。

 当社のテレビの販売台数マーケットシェアは30%を超えていますので、このシェアを生かしてビジネスにつなげていけばさまざまな可能性が広がります。アマゾンでもグーグルでもないネット社会対応を実現できるのではないかと考えています。バーチャルとリアル店舗との組み合わせを川下発想でいろいろと提案していきたい。

──配達軒数が年間1000万軒、1日3万軒です。今は家電製品の配達が中心と聞いていますが、ヤマダ電機グループが扱うどんな商品もその物流網に乗せ、宅配することができます。

一宮 そうです。すでに飲料水の配達はスタートさせました。当社はお客さまのご自宅にお届けするだけではなく、設置までやっています。当社の強みは、お客さまの家に上がらせていただいて作業ができ、提案できることです。しかも、既存のサービスインフラとシステムですから、ローコストでできる。それを使わない手はありません。

──グループ会社のすべてが立体的につながり、大きなビジネスモデルをつくりあげている。

一宮 ただ忘れてはいけないのは、われわれは家電量販専門店であり、あくまでもコアにあるのは家電です。そして、それに関連する商品をトイレットペーパーから一戸建てに至るまで販売しているということです。

 点を点で終わらせないで、線にして面で展開していくことが重要だと考えます。だからこそ多種多様な人材が必要になります。こういったトータル的なソリューションビジネスは人材抜きにしては成立しません。すでに当社の物販の利益は60%、その他40%はサービス型のソリューションビジネスで稼いでいるのです。

──そして海外ということでは、10年に中国に進出しています。現在は、瀋陽、天津、南京に3店舗を展開するに至っています。

一宮 中国というのは確実に伸長すると見込まれる魅力ある市場です。ただ、中国は身近な隣国ということもあって、これまではさまざまな面で安易に考えていた反省はあります。

 現在の家電の消費動向は、中国版のエコポイント制度が終了したこともあり、家電販売市場は大きく前年を割り込んでいるような状況です。ただ、中国の場合は、地道にやるべきことに徹していれば、お客さまは確実に支持してくださる。実際、当社店舗の場合は、対前年度比はプラスで推移しています。

──そのほかの国についての進出はどうですか。

一宮 ただ今、勉強中です。とくにアジア圏は魅力的なマーケットが数多くあります。先日、業務資本提携を発表したベスト電器(福岡県/小野浩司社長)は、すでにシンガポールやインドネシアに進出しているので、今後さらに実践的な勉強ができるものと期待しています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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