販売苦戦中の家電量販店、2023年度決算発表前に2022年度決算を振り返り!

兵藤雄之
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2023年の家電大型専門店販売額は前年比1.3%減の4兆6256億円だった(商業動態統計)。携帯電話を中心とする「通信家電」を除くと、ほぼすべてのカテゴリーで前年を下回った。大手各社の家電販売も伸び悩んでおり、23年度業績を下方修正したり、減益を見込んだりする企業も少なくない。

ヤマダデンキの新コンセプト総合型店舗1号店「Tecc LIFE SELECT 熊本」

ヤマダ、“暮らしまるごと提案”体験型店舗を出店

 商業動態統計によると、2023年の家電大型専門店販売額は前年比1.3%減の4兆6256億円だった。携帯電話を中心とする「通信家電」を除くと、ほぼすべてのカテゴリーで前年を下回った。
コロナ禍の巣ごもり需要で売上を拡大した20年(4兆7927億円)からは3.49%減。コロナ前の19年(4兆5453億円)と比べると1.77%増にはなっている。

 業界トップのヤマダホールディングス(群馬県:以下、ヤマダHD)の24年3月期決算は増収減益予想。第3四半期(3Q)累計の売上高は前年同期比0.5%減の1兆1771億円だった。

 23年3月期から「YAMADA HD 2025中期経営計画」をスタート。家電、家具・インテリア、生活雑貨、リフォーム、おもちゃ等を取り揃える“暮らしまるごと提案”の体験型店舗「LIFE SELECT」(ライフセレクト)の展開を進めており、23年6月にはヤマダデンキ、アークランズが運営するホームセンタームサシ、イオンスタイルが業態を超えてコラボレーションした総合生活提案型ショッピングスクエア「アークスクエア御経塚」内に、日本最大級の店舗「Tecc LIFE SELECT 野々市御経塚店」(石川県野々市市)をオープンした。

 業界2番手、大阪に本部を置くエディオンの24年3月期3Q累計は売上高が0.2%減の5376億円だった。23年12月、イオンモール(千葉県)が運営する商業施設「CeeU Yokohama」(横浜市西区)に同社最大級の「エディオン横浜西口本店」をオープン。都市型大型店としては4店舗目になる。

 業界4番手のケーズホールディングス(茨城県:以下、ケーズHD)は、24年3月期第2四半期に通期業績予想を下方修正。通期の既存店売上伸長率1.4%減を見込んでいる。

 22年9月に秋保社長新体制となって初の決算となった23年8月期のビックカメラ(東京都)の単体売上高は4.9%増の4255億円、傘下のコジマ(栃木県)は4.1%減の2678億円、ソフマップ(東京都)は4.6%増の411億円だった。24年8月期第1四半期は、ビックカメラが1039億円(4.1%増)、コジマが599億円(5.7%減)、ソフマップ101億円(3.8%増)となっている。

 売上規模業界3位のヨドバシカメラ(東京都)は、23年6月、東北最大級の家電量販店として、「ヨドバシカメラ マルチメディア仙台」をJR仙台駅東口の「ヨドバシ仙台第1ビル」に移転オープンさせた。また、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)から米国投資会社フォートレス・インベストメント・グループに売却されたそごう・西武(東京都)から、西武池袋本店、そごう千葉店の土地・建物の一部を購入している。同社は非上場のため、売上高の公表は未定だが、今後のランキングに影響を及ぼす可能性が大きい。

純利益率トップのノジマ、売上順位を上げる

 間もなく、23年度決算が発表になる。各社の決算発表の前に、22年度決算での売上ランキングはどうなっていたのか、ここで振り返っておこう。

 『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の「日本の小売業1000社ランキング」(23年9月15日号)によると、CE企業は巣ごもり需要からの反動減、物価高による生活防衛意識の高まりによる家電の買い控えなどから、前年の25社から22社に減少、売上総額は前年から約774億円減の5兆7916億円にとどまった。

図表●家電量販店2022年度決算

 ランキング上位で変動があったのが、「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)を適用したビックカメラと傘下のコジマだ。ビックカメラが5位から6位、コジマが7位から8位へ、それぞれ前年から順位を1つずつ下げた。

 トップはヤマダHD。23年3月期の売上高は1.2%減となったが、2位以下を大きく引き離す1兆6005億円を売り上げている。

 家電事業が減収となったが、22年4月と10月に注文住宅やリフォームを手掛ける建設会社2社を子会社化したこともあり、住建事業の売上高は1.5%増の2723億円に伸ばした。23年3月期は家具やリフォーム商材などを揃える「LIFE SELECT」業態の店舗開発に力を入れ、12店舗を出店した。

 2位はエディオン。23年3月期の連結売上高は1.0%増の7205億円だった。品目別では季節家電の売上を最も伸ばし、家電事業に次ぐ柱として注力するリフォーム事業も好業績を残した。
ヨドバシカメラは7093億円(22年3月期)で第3位の座をキープ。

 4位ケーズHDの23年3月期決算は、売上高が0.3%増の6309億円、純利益が34.8%減の123億円だった。社員の基本給を上げたことによる人件費の上昇や、水道光熱費の増加が利益に影響した。

 売上7位のノジマは前年からワンランクアップ。純利益ではヤマダHD、ヨドバシカメラに次ぐ存在で、売上高純利益率はダントツだ。

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