家丸ごと一戸へのソリューションを提供する=ヤマダ電機社長兼COO 一宮忠男

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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M&Aの効果は絶大!

──さて、ヤマダ電機は、これまでM&A(合併・買収)を積極的に進めてきました。物販小売業では、ぷれっそホールディングス(マツヤデンキ、星電社、サトームセン)、九十九電機、ダイクマ、キムラヤセレクトなどをグループに加えています。統合効果は出ているのですか?

一宮 非常に出ていると自負しています。システムや物流は、規模に応じて効果が出なければおかしいので当然ですが、中でも効果が上がったと感じているのは、人材面です。当社は、子会社だからと言って、人事的な差別は一切ありません。同じ基準で評価し、優秀と判断された従業員はどんどん登用していますし、していきたいと考えています。

 M&Aは、新しい業態の開発にも貢献してくれています。たとえば、マツヤデンキと一緒になったことで、3万~5万人の小商圏を対象にした150~200坪の店舗運営やフランチャイズ展開のノウハウを習得することができました。

 さらには、家電製品だけでなく、加工食品、酒類、生活雑貨、ドラッグなど取引先が拡充し、取扱商品の幅が格段に広がり、ポイント制の導入とも重なりお客さまの利便性の向上につながりました。

ヤマダ電機

──12年10月にはS×L構法(木質パネル工法)で定評のある住宅メーカーのエス・バイ・エル(大阪府/荒川俊治社長)を子会社化しました。

一宮 これも新業態と言えるかもしれません。S×L by YAMADAのもと「トータルスマニティライフコーナー」と銘打ち、住宅と家電のみならず、家丸ごとひとつのソリューションを提案しています。

 分譲事業にも本格的に参入していきます。すでに群馬県板倉町では、行政と連携して、スマートハウスの集合体であるスマートタウン事業をスタートさせました。東武伊勢崎線沿いで都心から1時間ほどの物件です。このように不動産付きで住宅を販売していきますが、当社の特徴は、そこに太陽光発電や蓄電池、省エネ家電などをからませスマートハウスとして提案することです。

 これは、まさに川下発想です。小売業の立場ですから、お客さまのご要望にあわせたさまざまなメーカー商品を幅広く提案することができます。またグループ内には、今年6月に子会社した住宅設備機器を扱うハウステックホールディングス(東京都/星田慎太郎社長)がありますので、浴室、厨房、エコシステムなどはもちろん、リフォームなども一体でお客さまにご提案できるようになりました。

 さらには、リサイクルプラントを持つ東金属(東京都/長峰登社長)を子会社化しました。これによって、家電製品を仕入れて、販売し、使っていただき、ご不要になれば回収し、再生しリユースもしくは都市資源として処理する、という家を中心としたひとつの大きな循環型ビジネスを展開していきたい、と考えています。

──さかのぼって、08年には、家電小売店事業を営む加盟店にリテールサポートシステム(協業システム)を提供するコスモス・ベリーズ(愛知県/牧野達社長)を完全子会社化しています。

一宮 地域店であるパパママストアに商品を提供している企業です。入会金は3万円で月々1万円を支払っていただき、コスモス・ベリーズが商品を卸すというものです。メーカー特約店を展開する店主がそれ以外のメーカーの製品を調達するときに使ってもらっています。だからフランチャイジーとも違います。私どもはボランタリーチェーンと呼んでいますが、制約はほとんどありません。近くのヤマダ電機をショールームとして使っていただき在庫もそこから調達、その商品を店主の小売店を通じて購入してもらうことができ、利益もしっかり確保できるというものです。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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