「時間」という価値を売る店づくりに挑戦中=東急ストア 木下雄治社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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 お客さまは来店されたときは、まだ何を買うかを決めていません。その時点で、いかにインパクトを演出できるかで売上ががらりと変わってきます。こうした取り組みによって、7月、8月の売上高は対予算比でトントンというところまで回復しています。もちろん青果売場の売上も維持できていますので、大きな手ごたえを感じています。

──店長の“気づき”により、売場が変わり、その結果が数字として表れてきているわけですね。

木下 そのように見ています。すでに半分ぐらいの店舗の店長がリフレッシュ休暇を取得済みです。先進的と言われる他社の優良店舗を見たことで、自店の売場の課題に気づいているのです。たとえば、店長の大半がヤオコー(埼玉県/川野清巳社長)さんの店を見に行っていますが、ヤオコーさんに置いてある商品のほとんどは、当社でも品揃えしている商品なのです。ということは、見せ方や売り込む力に違いがあるのだということに気づいたわけです。

 ただし、見せ方が違うからといって、ヤオコーさんのような郊外の大型店の売り方と、駅前立地の小ぶりな当社の店では、同じ売り方はできません。当社はどうしても圧縮陳列を採用せざるをえませんから、やはり売場づくりの方向性としては、当社の価値である“時間を売る”売場を磨き上げていくということになります。

 そこで、“時間を売る”とはどういうことなのかを、徹底的に話し合い、お客さまにとって買いやすい売場づくりを追求している最中です。そうして考えたものを実際に売場でトライして、その結果を検証してさらに改善を図っていくということを繰り返していきます。

──“待命受命”の企業風土から一転、自発的に行動する組織へと変わりつつあるようですね。

木下 本当にそう思います。たとえば「立川駅南口店」(東京都)では、店舗の入口に空きスペースがあり、そこではこれまでどんな施策を打ってもうまくいかなかった。ところが先般、衣料品のセールを実施したところ、素晴らしい成果をあげました。そういう自発的な工夫が各店で出始めています。

 あと1年も経てば、古い垢がきれいに落ちて、本当の意味での新しい東急ストアの体質が芽生え始めるものと見ています。

 では、その新しい体質をどうやって定着させていくのか。それが、私が次に取り組むべき仕事だと考えています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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