「時間」という価値を売る店づくりに挑戦中=東急ストア 木下雄治社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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 さらに今後、社長室主導で店長研修やマネジャー研修、バイヤー研修の仕組みや内容の刷新を進めていきます。

東急ストアの最大価値は、“時間”にあり

──さて、売場づくりや商品政策面では現在、どのようなことに取り組んでいるのですか?

木下 大きくは2つあります。1つめは、今年2月から52週マーチャンダイジングをスタートさせました。売り込み商品を決めて、それをどういう企画で売るのか、全社を挙げて取り組んでいます。

 商品部や営業本部の力が露骨に結果となって出ますから、「いかに売るか」という企画力は徐々にレベルアップし、経験値を上げていくものだと考えています。経験値を上げないことには企画力も販売力も付いてきませんから、「とにかく失敗してもよいから、毎週アイデアを出してほしい。52週間続けることが大事だ」と社内では言っています。

 2つめはデータ分析です。バスケット分析(顧客の買物かごの中身から、関連購買されやすい商品を見つける手法)やPI値(レジ通過客1000人当たりの購買指数)分析、ABC分析、時間帯分析などを行っています。たとえばバスケット分析をすると、これまで私たちが思っていた関連購買と、お客さまが実際に買っている商品とが全然違っていることに気づかされます。

 データ分析をすることで、「お客さまが当社のお店に来てくれる価値は何か」をきちんと踏まえた売場づくりをすることにも着手するようになりました。

 当社の場合、お店はほとんどが駅前店舗であり、お客さまが当社に見出している第一の価値は“時間”です。とくに有職主婦の方は、「買物をする時間」「持ち帰る時間」「料理にかける時間」の合計で1時間程度しかかけたくないというのが通説です。時間消費が必要最小限で済むような、売場づくりや売り方、商品づくりができるように、現在、抜本的な見直しにも乗り出しました。

 たとえば、夕方6時以降に来店されたお客さまが、野菜と同時購買する調味料は何かを調べるために、バスケット分析をすると、「合わせ調味料」が挙がってきます。そこで、「合わせ調味料」を売場のどこで展開すれば本当にお客さまにとって買いやすいのか、を見直しているのです。つまり、今までのような品番ごとの棚割ではなくて、お客さま視点に立った新しい棚割をつくっていきたいと考えています。

第1アイランドを青果禁止に

──そうした取り組みを繰り返す中で、新しい売場は確実に生み出されている。

木下 そうですね。たとえば、6月15日以降、売場の第1アイランドに青果を置くことを禁止しました。第1アイランドから青果を撤去し、代わりに店長が最も売り込みたい商品を陳列しています。それに合わせてチラシも替えました。「店長のいちおし」商品がチラシに掲載されるようになり、第1アイランドには必ず、その売り込み商品が陳列されるようになりました。いちおし商品は、店長の自由裁量で選べますから、売場に個性が出て、売り込みたいという意思が売場にこもるようになるのです。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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