「時間」という価値を売る店づくりに挑戦中=東急ストア 木下雄治社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──社長塾の期間、頻度、内容はどのようなものですか?

木下 4月から9月までの半年間を1期として、月2回のペースで開催します。

 授業の1コマとして、メンバー全員で3日間関西に赴き、関西エリアの有力SM(食品スーパー)の店を視察して回りました。ストアコンパリゾンをしながら気づいた点を列挙して、「上質化」や「ビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)」など当社としての5つの課題に絞り込みました。そして、メンバーを5つのグループに分け、最終的には、執行役員会で課題の具体的な解決方法を提案してもらいます。

 これらテーマはメンバーに自由に選んでもらったものですし、視察場所もすべて自由に選んでもらいました。とにかく、自分たちがやりたいことをやってもらい、気づいてもらう、そして自分たちで考えたことを最終的に提案してもらうという仕組みです。どんな提案が出てくるか、今からとても楽しみにしているところです。

2週間の店長リフレッシュ休暇で、“気づき”促す

──どうして認知欲求を満たすことが重要だと考えるに至ったのですか?

木下 店回りをしているときに痛感したことなのですが、これまで当社の従業員は、上司や経営トップから怒られたから、注意されたから行動する、という体質でした。しかしながら、そのような受動的な動機でつくった売場は、その場しのぎでしかなく、売り込む力に欠け、その都度注意をしない限り、売場の維持もままなりません。

 だからこそ、自ら気づいて、自らアクションを起こす企業体質へと転換させたかったのです。従業員の仕事への取り組む姿勢が変わらない限り、本当の売り込み力や企画力向上にはつながりません。

 その実現のためには、従業員の認知欲求を満たし、色々なことに気づきを持たせることが、遠回りのようで、実はいちばんの近道なのです。

 その究極のかたちが、今上期に実施した店長のリフレッシュ休暇です。全店長に連続2週間の休暇を与えるというものです。

──店長に連続2週間の休暇を与えるという試みは、小売業界の中ではとても珍しい。

木下 最初の1週間は本当の休暇で、何をしてもかまいません。しかし、残りの1週間の休暇期間は、他社の店舗見学を義務化しています。休暇後にはレポートを私に提出してもらう、それだけです。当社の店長は真面目であり、真剣に書き込んだレポートを提出してくれます。そして、新しい刺激に興奮しながら店長業務に復帰している。

 たとえば、いちばん最初にリフレッシュ休暇を終えたある店舗の店長は、「私の店はPOPが多かった。しかし、お客さまの視点に立つと、何が価値なのかがまったく伝わらない売場になっている。だから、いったんすべてのポスターとPOPを取り払い、あらためて必要なものを付けていきました」と報告してきました。やはり、自分で気づいたことについては、自発的にスピーディに行動に移すものなのです。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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