今は、なりふりを構ってはいられない=ダイエー 西見徹 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──GMSという資産のバリューアップのために、テナントを誘致するとか、部分的に売却するなどの考え方もあります。

西見 確かにGMSの館全体の魅力を高めることはとても重要です。強力なテナントが階上にあればシャワー効果を、階下にあれば噴水効果を期待できますので、そのことはまったく否定していません。
現在、当社のGMSには、産業再生機構の支援のもとに誘致されたテナントが数多く出店しています。

 しかし、その当時からも、生活者のライフスタイルは大きく変化していますので、テナント数の多い20店舗にテナント副店長をあらたに配置するなどして、時代に適応できていないテナントを活性化し、館全体の魅力を創出していきたいと考えています。

 もちろん、直営売場にも多くの可能性が宿っていると思います。ここ数年ダイエーは売場効率や採算性を重視し、直営売場の圧縮を行ってきました。しかし、半面、縮めすぎたという反省もあります。当社は、衣食住の商品をしっかり揃えてお客さまにお買い上げいただくビジネスであるにもかかわらず、売場面積を縮めすぎたことで自社のノウハウを失ってしまいました。そして、そのことが、本来、小売業の持っているはずのバイタリティの劣化につながった。だか ら、現在は過去に取り扱いを止めたり縮小したりしたカテゴリーを見直し、復活させたりすることで小売業としての力を蓄えているところです。

企業としてのクオリティアップに専心

──社内の組織的には、代表取締役が2人いるわけですが、いかにすみ分けを図っているのですか?

西見 川戸さんは、小売業一筋43年の大ベテランで、イオンモール(千葉県/村上教行社長)の社長もご経験されショッピングセンターの事業にも明るく、営業部隊や不動産部隊を引っ張ってもらっています。川戸さんは、この長い経験から多くの情報や問題を解決するノウハウを有しており、私は、それを学びながら、ダイエーの企業としてのクオリティを上げることに専心しています。

 とくに、従業員のモラル(moral)とモラーレ(morale)アップを心がけています。モラルとは社会の一員である企業として求められる“高い倫理観”や“社会規範を遵守する精神”のことであり、モラーレとは“活力”や“エネルギー”“意気軒昂な気持ち”です。そのために、社長に就任してから 売場回りには力を入れてきました。2年7カ月で通算700回以上、店舗を訪れたのではないでしょうか。売場では、最初の30分は店長や営業部長と会社の現 状や方向性などをじっくり話します。その後、1時間ほど店を見て気づいた点を意見します。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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