今は、なりふりを構ってはいられない=ダイエー 西見徹 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──そうした効果もあり、09年2月期の決算では既存店舗の客数が対前期101%、売上は同100%をキープしています。小売事業は、いよいよ回復基調にあると言っていいのではないですか?

西見 確かに07年末くらいから、08年にかけて、順調に回復しており、手応えも相当よいものがありました。しかしながら、昨年9月15日のリーマンショックは、本当に大きな衝撃でした。まるで10%くらいの需要が一気に吹き飛んだという感覚です。実際、09年2月期の第4四半期以降は特に衣料品、生活用品が 苦戦を強いられています。

武器は“低価格”だけではない

──さて、ダイエーは価格訴求にはとくに注力しているように見えます。09年5月には値下げ商品を約 6000品目に拡大。7月には医薬品・化粧品の合計約600品目の値下げ。また、期間限定ですが、『バーゲンブロー ノイヴェルト』(第3のビール)を 350ml1缶を79円(約11%値下げ)で売り出しています。ダイエーの差別化戦略の最大の武器は“低価格”になりますか?

西見 いや、価格だけではありません。小売業は、トータルの顧客サービスが絶対的に重要だと考えており、価格はその構成要素のひとつにすぎないと考えるからです。その意味では、これまでずっと「安心・安全」「簡便」「快適」を合い言葉にして経営をしてきました。

 まず、「安心・安全」というのは商品の品質はもちろん、価格についても同じです。たとえば、世間相場よりも高値で販売していては、お客さまは安心して当社の商品を購入できないからです。

 次に「簡便」というのは、ショートタイムショッピングのことです。品揃えや棚割などに配慮して、お客さまに探す手間をかけさせないとかフラストレーションを与えないような心がけのことです。

 そして、最後は「快適」です。これはリラックスしていただける気持ちよさのことです。入店されてからお帰りになるまで、安寧な気持ちで買物を楽しんでいただけるような雰囲気づくりです。そして、この3つについては徹底的に追求していきたいと考えています。

──ただ、世間相場並みの価格訴求はしなければいけません。その値下げ原資はどこから捻出するのですか?

西見 昨年同時期に比べ、様々な分野で原材料価格が下がっており、その分メーカーさんにご協力をお願いしています。また、値下げした商品はダイナミックに売場展 開することで、販売数量が増加しますし、併せて定番商品との関連販売をご提案するなどして、トータルで粗利益を確保するようにしています。さらには、ダイ エー独自の付加価値型PB「おいしくたべたい!(食品)」「愛着仕様(衣料品)」「SALIV(生活用品)」、イオングループの「トップバリュ」などのプ ライベートブランド(PB)がありますので、これらを拡販することで利益を下支えします。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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