好調!ドンキ運営のPPIHが“優等生化”!?新中計にみる新たに研ぐ成長の牙とは

椎名則夫(アナリスト)
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洗練された施策 ドンキらしさはどこに?

 具体的な重点施策を見てみましょう。筆者の意訳を含めて整理します。

  1. 国内事業:SPA(製造小売)推進、金融事業強化、CX(顧客体験)改革(majicaアプリ活用による顧客生涯価値の最大化)、生産性改善(含む労働分配率管理)、業態開発
  2. 海外事業:規模拡大、グローバルバリューチェーン構築。国内増益と同等の増益を実現へ。
  3. ESG(環境・社会・ガバナンス):持続可能な社会と企業の実現

 いかがでしょう。

 率直に言って、洗練された”優等生的”事業戦略であり、額面通りポジティブに捉えるべきものだと思います。

 しかし、一方で少し残念なことに、”ドンキらしさ”が薄れた気がします。個店主義、従業員一人ひとりの情熱と商い魂を拠り所にした現場主義、手作り感のようなものが後退した気がしないでもありません。

 もし社名を伏せて、「イオンの戦略骨子だ」と言われたら、筆者は信じてしまうかもしれません。

創業経営陣退任後の必然

 とはいうものの、経営計画の色が変わっていくのは必然でしょう。

 PPIHの場合、前社長・大原(孝治)氏の退任で創業メンバーによる経営は終了し、その後は言ってみればプロ経営者の経営に移行しました。PPIHの聖書である源流をプロ経営者が語っても、創業メンバーと比べれば説得に劣ることは否めないと考えます。また社員も若返る中、時代に即した経営戦略、経営管理が求められます。

ポストコロナ禍でも続く向かい風に対する必然

 もう一つ、より重要なポイントは、ポストコロナ禍においても向かい風の事業環境が続くと考えられることです。したがって、PPIHの経営資源と事業ポテンシャルを今日的に棚卸しし、新しい指針をプロ経営者が示すことを歓迎すべきだと思います。筆者は、この新中長期経営計画の言語に、私のような古くからのドンキファンに対するチャームが乏しいことに寂しさを覚えつつも、現経営陣の自らの言語による発信をポジティブにとらえたいと思います。

 では今後の向かい風とは何でしょうか。

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