追悼 平和堂 夏原平和会長 生前語った「流通業に対する思い」

2021/12/21 10:28
千田 直哉 (編集局 局長)
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人間が存在する限り、流通業はなくならない

――日々、実行されている健康維持法はありますか。

夏原 歩くようにしています。寒い時期は控えますが、暖かくなると1日1万歩を目安に運動をしています。そうすることで健康診断の数値も改善してきています。あとはタバコを吸わないようにするとか常識的な健康法です。新店が続き、仕事が多くなれば意識して寝ようとか、そういったことでいいのではないでしょうか。しかし皆さんも同じでしょうが、若い頃はとくに考えていませんでしたね。50歳を過ぎてから、気をつけるようになりました。

――平和堂を志望する最近の学生を見て、お感じになられることはありますか。

夏原 おかげさまで当社の企業規模は大きくなりました。そのためか安定志向の学生が増えているように思います。一方、羽目を外した行動を取るパワーを持った人は少なく、全体的にまじめな方が多いですね。皆さん、裕福な環境で大切に育てられてきているのでしょう。一般的に、現代の若者は何か困難があると気持ちが揺らぎ、精神的に不安定になる可能性が高いと聞きます。それに対し、いかに教育していくかは会社として難しい問題です。甘やかせてばかりというのもいけないと思います。

流通業は、私が最初に向き合った頃とは大きく様変わりしています。昔のように毎年、会社が成長するとか、商品を置いておきさえすればどんどんと売れるとかいった時代ではないのが現状です。その分、仕事の面白さが分かりにくい時代でもあります。

しかし流通業は、人間が存在する限りなくなりません。その時代が求める、または合った商品を売ることができれば必ず存在が許されます。求められるのは安さだけでなく、品質、おいしさなどさまざま。自分たちがどんなお客さまに、どのようなお役立ち、貢献をするのかを考え、一生懸命に仕事に取り組めばスペシャリストになれます。確かに厳しい時代ではありますが、見方を変えればチャンスです。ものごとはすべて受け取り方で見え方も違ってくるのだと思います。

――それにしても夏原社長はいつも温和です。

夏原 いや、経済状況が低迷し事業にも影響していますから、心の中は大変です(笑)。しかし、そのような状況にあっても穏やかな表情でいることが、次を好転させる元だと信じているので心がけています。これもいわば考え方ひとつなのです。流通業に入ってこられた若い方々は、仕事をしていて怒られることもあるでしょう。またこの仕事が自分に向いているかどうかなど、迷うこともあるかも知れません。しかし、どんな時でも「これは自分を鍛えるために起こっているのだ」と考えてほしいものです。そう信じ、仕事が好きになれば次のステージが見えてくるはずです。

(2010年3月5日取材)

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記事執筆者

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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