追悼 平和堂 夏原平和会長 生前語った「流通業に対する思い」

千田 直哉
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まず思わなあきまへんな

――最も影響を受けた人物は誰ですか。

夏原 京セラの創業者、稲盛和夫さんです。25年以上のおつきあいがあり、稲盛さんが主宰されている「盛和塾」に参加する一方、滋賀県での代表世話人を務めています。稲盛さんからは、とくに会社経営について教えてもらっています。鹿児島大学工学部出身であり、ご自身の成功体験を非常に論理的に説明され、とても勉強になります。

――稲盛さんは、どのようなことを話すのですか。

夏原 一番、教えられたのは「“思い”の重要さ」です。どんなことでも強く思っていたらその通りになるというものです。かつて稲盛さんは、松下幸之助さんの講演会を聴講し、そのことを知ったのだそうです。

松下さんはその講演会で、会社が順調な時も将来の有事に備えた経営の必要性を説かれました。水を安定的に供給できるダムから着想した、いわゆる「ダム式経営」です。

質問の時間になり、ある人が「誰もが余裕のある『ダム式経営』をしたいと考えている。しかし、それができないから困っている。具体的に教えてもらわなければ困る」と批判的に意見しました。それに対し松下さんは「まず思わなあきまへんな」と答えたそうです。普通であれば、失笑を買うような回答に聞こえます。しかし、稲盛さんは、その何気ない一言に感激して、思うことの重要さに開眼されたそうです。

――興味深い話ですね。ところでご自身が実践されている情報収集法についてお教えください。

夏原 日頃からニュースを見たり、読んだりしています。とくに流通業界については各社の取り組み、新しい話題についてチェックしています。興味を持ったものは、専門書や専門誌を買い求め、さらに詳しく調べるようにしています。情報収集をするには問題意識を持つことが必要です。つまりアンテナを立てておくのです。情報過多の時代にあっては、とくにその重要性は増しています。

――意識し、アンテナを立てていると日常生活の風景も違ってきますか。

夏原 よく電車に乗るのですが、自然と乗客の服装に目がいきます。少し前ならほとんどの人がコートを着ていましたが、暖かくなると8割は着なくなります。そんな時、「今、冬物の処分セールをやっても売れないな」といったように想像がつきます。普段の生活でも意識していると、仕事に関する情報が入ってくるものです。つまりアンテナを立てると行動も変化してくるため、最終的には、思えば実現するという「“思い”の重要さ」にも通じるというわけです。

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