11期連続赤字の松山三越が一気に黒字転換へ、苦境の地方百貨店、新しい戦略とは

Pocket

見るべき店大

三越伊勢丹ホールディングス(東京都/細谷敏幸社長:以下、三越伊勢丹HD)傘下の松山三越(愛媛県/浅田徹社長)は2021年10月、約30年ぶりに「松山三越」の大規模な改装を実施した。地方百貨店の苦境が叫ばれるなか、地域の企業などと積極的に連携し、三越伊勢丹HDのグループ力も生かしながら、新しい地方百貨店のかたちを生み出そうとしている。

机上のデータではなく、現場観測で需要を調査

 地方百貨店は、ショッピングセンター(SC)をはじめとする商業施設との競争が激しく、また近年ではECの台頭もあり、厳しい事業環境にさらされている。戦後間もない1946年に開業した「松山三越」は、松山市の中心市街地にある「大街道商店街」の入口にあり、長年地域で愛されてきた。しかし近年は“百貨店離れ”が進み、また南西約1㎞には伊予鉄道「松山市」駅直結の百貨店「いよてつ髙島屋」の存在もあることから、入店客数が減少し、21年3月期まで11期連続で赤字と業績が低迷し続けてきた。

松山三越
約30年ぶりに大改装を実施した「松山三越」
●所在地: 愛媛県松山市一番町3-1-1
●電話番号: 089-945-3111(大代表)
●営業時間: 10:00~19:00

 こうしたなか18年4月に着任した浅田徹社長は「『このままでは店舗を存続できない』と強い危機感を持つ一方で、立地のよさを生かせばまだやりようはあると考えていた」と当時を振り返る。そこで着任直後に大規模改装を決断し、本社と丁寧に協議を重ねながら、計画を進めた。

松山三越の浅田徹社長
松山三越の浅田徹社長

 大規模改装にあたって重視したのは「立地の必然性」と「地域協業」だ。時代の移り変わりに伴って変化する顧客ニーズを的確にとらえ、立地に求められていることにきちんと応えながら、地元の企業や大学などとともに新たな事業を創造し、従来の百貨店ともSCとも異なる独自の店づくりをめざした。

 まず浅田社長が着手したのは顧客ニーズの調査だ。松山三越では従来、三越伊勢丹グループのクレジットカード「エムアイカード」の会員情報や購買履歴をマーケティングに用いてきた。しかし、顧客ニーズを正しくとらえるには、ロイヤルティの高い顧客のデータだけでは十分でない。そこで松山三越が実施したのが

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

1 2

記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

ダイヤモンド・チェーンストア編集部は、業界をリードする提案型編集方針を掲げ、小売業の未来を読者と共に創造します。私たちは単なるニュース伝達に留まらず、革新的なビジネスモデルやトレンドを積極的に取り上げ、業界全体に先駆けて解説することを使命としています。毎号、経営のトップランナーへの深掘りインタビューを通じて、その思考や戦略を読者に紹介します。新しくオープンする店舗やリニューアルされた店舗の最新情報を、速報性と詳細な分析で提供し、読者が他では得られない洞察を手に入れられるよう努めています。私たちの鋭い市場分析と、現場の細部にわたる観察を通じて、注目すべき店舗運営の秘訣を明らかにします。

ダイヤモンド・チェーンストア編集部紹介サイトへ

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態