食品小売で一気に進む!競争に巻き込まれない新しいPB戦略とは?

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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競争のPB戦略1280

大手チェーンによる新ブランドが続々登場

 依然続く物価高を背景に、食品小売のプライベートブランド(PB)商品に注目が集まっている。

 「PB」に対する消費者のイメージといえば、「ナショナルブランド(NB)商品の類似品を価格を抑えて販売した商品」というものが一般的だ。実際、インフレで生活防衛意識が高まる中、NBの代替品として PB商品を利用する消費者が増えている。

 消費者ニーズに合致するかたちで、各社のPB売上高は拡大を続けている。イオン(千葉県/吉田昭夫社長)グループの共通PB「トップバリュ」の売上高は、間もなく発表される2024年2月通期決算で初めて1兆円に到達する見通しとなっている。セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)の「セブンプレミアム」は、メーンの販売チャネルがコンビニエンスストア(CVS)ということもあってコロナ期間中は売上成長が足踏みしたものの、足元では価格訴求型ライン「セブン・ザ・プライス」などで成果がみられており、 24年2月期のPB売上高は過去最高の水準まで復調する予想だ。

 一方、ここ数年の食品PBでは新たな動きもみられている。食品スーパー(SM)企業による「健康」「環境」などを切り口とした新ブランドの相次ぐ登場だ。小売業界におけるこの分野の元祖といえば、「トップバリュグリーンアイ」だが、長らく本格的に追随する企業は現れなかった。

 そうしたなか、今回の火付け役とも言えるのがSM大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)で、20年より自然派PB「BIO-RAL(ビオラル)」より展開。ターミナル駅などの人口集積エリアに「ビオラル」屋号の店舗を出店すると同時に、既存店へのBIO-RAL コーナーを導入するなどブランド定着に力を入れている。

ライフが展開する自然派PB「BIO-RAL」
近年、SM企業が「健康」「環境」をキーワードとした新ブランドを立ち上げる動きが相次いでいる。その火付け役的存在が、ライフが展開する自然派PB「BIO-RAL」だ

 続くように、アクシアルリテイリング(新潟県/原和彦社長)グループの原信およびナルス(新潟県/丸山三行社長)が、社会課題を起点とした新ブランド「Hana-wel(l ハナウェル)」を23年4月から本格展開。23年11月にはヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)が健康軸の新ブランド「Happiness(ハピネス)」の販売をスタートしている。

 現時点では、こうした商品群の展開が売上・利益を大きく押し上げる存在にはなっていないが、着実なファン拡大とそれらお客の客単価アップにつながっている。「健康」「環境」への関心は高まる一方であり、そう遠くない将来、こうした商品群を揃えているかどうかが競争に大きく影響してくるかもしれない。

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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