無印良品、宿泊・滞在事業を本格展開のねらいとは?

西岡 克(フリーランスライター)
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良品計画(東京都/清水智社長)は既存の宿泊施設の客室をリノベーションし、宿泊業者が運営する新事業「MUJI room」を昨年12月からスタートした。2023年からは古民家などの遊休施設を改造して自社運営の宿泊施設として生まれ変わらせる「MUJI BASE」の展開を始めている。本格的に動き始めた「無印良品」の宿泊・滞在事業の現況と今後の方向性についてレポートする。

「MUJI HOTEL GINZA」は19年4月に東京・銀座の旗艦店「無印良品 銀座」があるビルの上層階に開業。「地域文化のショーケース」を旗印に、MUJIの世界観を発信する

2パターンで展開する「MUJI room

 世界最大の売場面積を持つ無印良品が開業したことでも話題となった、「イオンモール橿原」(奈良県橿原市)からクルマで約50分。創業97年の小さな老舗旅館・坂本屋の全6室のうち3室を良品計画がリノベーションし、25322日から宿泊客の受け入れを始めたのが「MUJI room SAKAMOTOYA」だ。

 内装には名産の吉野杉を使用するほか、室内にはヒノキなど5種類の地域の木材を使って地元作家がつくったテーブルなどの家具が並ぶ。ベッドや食器、部屋のアメニティや菓子はいずれも無印良品の製品だ。良品計画が客室の改装費用を負担し、旅館側に運営を委託している。宿泊料は素泊まりで1114200円~。

坂本屋の2階の2人部屋を改修した「MUJI room SAKAMOTOYA」の1室。吉野の木材をふんだんに使用。正面の飾り棚は元の部屋にあった60年前のつくりを生かした

 坂本屋の坂本圭至朗氏は「観光客は4月の桜の開花時期に集中し、年間を通じて誘客できないので、多くの旅館が廃業した。良品計画の力を借りて、長期滞在の訪日外国人客など新しい需要を取り込めるのではないか」と期待する。

 良品計画が推進する「MUJI room」の事業には2つの展開パターンがある。

 1つはホテルや旅館から一部の部屋の改装を受託し、売上の一部をライセンス料として受け取る「受託型」。そして坂本屋のように遊休宿泊施設を無償で借り受け、良品計画側が先行投資して改修し、売上の一部を得ることで初期投資ができない地域事業者を支援する「地域共生型」だ。受託型では「リーベルホテル大阪」(大阪府大阪市)の客室12室を「MUJI room LIBER HOTEL」として昨年12月にオープンしている。

 

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