ユニクロにやられっぱなしではいられない! 中堅アパレルチェーンのフォロワー戦略

棚橋慶次
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独自路線、コバンザメ……中堅アパレルの戦略

 アパレル業界全般が低調に推移している中で、業績を伸ばしていているのがワークマン(群馬県)だ。近年の業績の伸びは凄まじく、22年3月期の売上高は1162億円とユナイテッドアローズを射程圏内にとらえている。

 ワークマンは建設作業労働者向けの作業着・衣料品の専門店として圧倒的なトップシェアを築いてきた。2018年からは一般向けの高機能ウエアを扱う新業態「ワークマンプラス」をスタートし、3期連続でCAGRを2ケタ台に乗せた。とくに2020年3月期の売上高は対前期比37%増と驚異的な伸びを見せている。プロ向け作業着が持つ高い機能性(耐久性・柔軟性・軽量)と低価格が、カジュアルウエアの世界で消費者の支持を集めた格好だ。

 最近は女性ユーザーからも支持を集めており、2020年10月には女性をメインターゲットに据えた新業態「#ワークマン女子」の展開をスタートしている。「低価格・高機能のカジュアルウエア」という新市場(ブルーオーシャン)を開拓したからこそ、ワークマンは急成長できたのである。

 もう1つ注目したいのが、ヤング層をターゲットとする低価格ブランド主体のアパレル企業であるハニーズホールディングス(福島県)だ。中国に縫製工場を擁し、企画・製造・小売まで手掛けるSPA(製造小売)に支えられたクイックレスポンスを強みとする同社。他ブランドが売り出した流行の商品をすぐにオマージュして低価格で売り出すフォロワー戦略により、消費者の支持を集めている。

 ハニーズホールディングスの2022年5月期の売上高は、対前期比5.1%増の476億円と、コロナ禍にあっても前期実績を上回った。2013年5月期の売上高619億円をピークに低落傾向にあったものの、2020年3月期を底に持ち直すしぶとさを見せている。

 一方で収益性は安定しており、2022年5月期には売上高営業利益率を2ケタに乗せている(10.5%)。しまむらや西松屋チェーンも売上高営業利益率は1ケタ台であることを考えると、健闘していると言っていい。

 

 中堅チェーンは果敢なチャレンジが大事な一方で、自らのケイパビリティ(組織能力)を省みないと痛い目に遭うこともある。たとえばハニーズホールディングスは、急成長を続ける中国に進出したことがあるが、同業間の厳しい競争環境においてプレゼンスを発揮することなく、2018年に完全撤退している。他社に追随して海外に飛び出しても、成功することは難しい。

 アパレルは、多様なブランドがあってこそ、リーディングブランドも光る。「ユニクロ」は確かに優れたブランドではあるものの、どこへ行ってもユニクロばかりではつまらない。消費者の選択肢を増やすためにも、中堅アパレルチェーンには健闘してもらいたい。

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