日本企業の戦略が凡庸な理由と「中卒・高卒エリート」が静かに増加中のワケ

河合 拓 (代表)
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Yusuke Ide/istock
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 テレビでは○○大王というクイズ番組が人気だが、本来は日本経済をどのように立て直すべきか、投票率をどのようにあげるか、あるいは、徴兵制は必要か否かというような意地悪な質問であっても必ず直面する問答を中学、高校でやってもよいと思う。つまり、問い自体は簡単でも、その根拠は極めて深い洞察と幅広い知識が必要になる能力、加えて、プレゼンテーションやディベートという日本人になじみのないスキルを徹底的に磨くべきで、金融の基礎知識を教える、などという本末転倒なことを義務教育でやることが間違っていると私は思う。本来、論理的に考えることができて、そして、他人と何時間もディスカッションができる討議にこそ時間を割くべきだと私は思う。

  私の周りにはいわゆる「中卒、高卒エリート」が増えてきた。彼らは大学を出ている人間以上によく学び、例えばデジタルマーケティングを鮮やかに決め、AIの会社を立ち上げIPOしたりなど、ひ弱くんには絶対にできない芸当だ。真のスーパーエリートは、アカデミック・キャリアトラックに一定のリスペクトを示すも、分け隔てなく政治や上下関係にこだわりをもたず、また、間違っていること、不快なことはストレートにフィードバックしてくれる。

プロセスの新しいフレームワーク「JKKP」とは

  究極的に経営学には特定の分野はないといわれる。それを、我々はマイケル・E・ポーターが定めたバリューチェーンなどを参考にして分け、機能を定義している。しかし、その正誤はポーターが言ったから、ではなく、一番しっくりくるからである。私は、これを「JKKP」 と読んでいる。

  Jとは事業、Kは企業、Kは機能であり、最後のPはプロセスだ。まず、このJKKPを空で覚え、自分の所属している産業界に当てはめて考えてみることが大事である。

 最初のJは、3つにわかれ、「企画」→「生産」→「販売」である。次に、この3つの括り方で企業がもつ産業における立ち位置が見えてくる。例えば、ユニクロは企画と販売で、生産は外注化している。その逆に、オンワード樫山は企画と生産をカバーして、販売は全国百貨店に外注化している。ZOZOは販売で、一部PBはあるものの大局的には企画と生産を外注化しているのだ。このように、ものごとを筋道たてて考えてゆければ、「知っている、知らない」というのは価値がどんどん下がってゆく

 次に、オンワード樫山が企画と生産という機能を有しているとするなら、その中の「生産」には、材料発注、付属発注、工場選定、検品などの「機能」にわかれ、この企画→生産→販売に繋がる一連の企業の役割がわかるのだ。しかし、その「企業」に勤めている人は、その世界が全てなので、こうしたものの見方ができない。本来、ものが見えないと気持ちが悪くなるのだが、前述のように「四の五の言わずに覚えろ!」と教育されていたので、疑問を呈したら「なんで太郎君は黙っているのに、お前は、、、」と上司から怒られる。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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