EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
どう生き残るか?カタログ通販の将来戦略
![ECの時代、カタログ通販はどう生き残るか?(recep-bg/istock)](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2023/08/iStock-1128467595.jpg)
これまでの考察をまとめれば、カタログ通販の業界ではスクロールがもっともよいポジショニングにあるということになる。これは、ひとえに堀田会長と当時の役員、そして、私のタッグが非常にうまく機能したからだ。同社の高収益の秘密、そして、今後についてのコメントは控えさせていただきたい。同社から離れて6年以上経つとはいえ、いまだに同社の内状はよく分かっているからだ。
しかし、スクロール含め世の中は、徐々にデジタルシフトしており、いわゆる「カタログビジネス」の生き残りは難しい。ここで、ファッションカタログ通販企業のDoCLASSE(カタログ名も同名) について述べたい。 DoCLASSEの場合、社長の林恵子氏がランズエンドというカジュアルウェア通販の米国最大手の日本支社長、ビクトリアズシークレットなどを経験し、通販のイロハをよく知っているスーパーマーケターなのだ。そして、私が再三、述べているAcquisitionについては、リアル店舗を出店することで認知度を高め継続購入に繋げている。CPA(顧客獲得コスト)といえば、すぐに「インフルエンサー」 x 「SNS」という人間ほど、何も分かっていないマーケターなのだ。このAcquisitionこそ、カタログ通販の最大の課題であり、判を押したように「デジタルシフト」などと言っている企業の将来は暗い。
私は通販業界においていくどもEC化にチャレンジしたが、二つの理由で失敗してきた。一つは、ECの世界はAmazon、楽天、ZOZOTOWNなど競合がひしめき合うレッドオーシャンだ。そこに、なんの差別化武装もせずに入り込めば、即死するにきまっているのだ。また、いままでやってきたRFMという、顧客を絞り込むデッド(反応しない顧客)を増やす手法に体が慣れた組織は、在庫管理から顧客管理までの一連のバリューチェーンをいかに設計するかという未来像が見えていない。それは、一見盤石な経営に見えるスクロールも同じだ。
一方、デジタルシフトを急ぎ、レッドオーシャンにいきなり入り込む企業も少なくない。通販市場はまだ数年は存在しえるもので、パッシブなカタログ好きの顧客も一定量存在する。その市場規模は3000億円とも7000億円ともいわれ、今述べた3社を合算してもなお余るほどだ。こうした科学的考察をきちんと行って、段階的なトランジションを行うことがカタログ通販の生き残り施策と言える。
最後に、コンサルタントに毎年数千万円を払い続けたスクロールが収益力ではトップで、コンサルフィーを人件費と混同し「高すぎる」と自社だけに固執している企業は総じて失敗していることをよく考えていただきたい。また、コンサルを高い金で雇うなら、会社のブランドで選ぶのでなく実力で選ぶべきだ。どことはいわないが、間違ったコンサルの食い物になっている会社を何社もみてきた。カタログ通販は、この変化の大きい時代、自前主義から抜け出し外部からの知を利用すべきである。それは、上記の数字をみてもハッキリとした証明になっている。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
株式会社FRI & Company ltd..代表(2023年8月1日に社名を河合拓コンサルティング株式会社より変更)Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。最近ではAI企業、金管楽器メーカー、中国企業などのスタートアップ企業のIPO支援などアパレル産業以外にクライアントは広がっている。座右の銘は生涯現役。現在は慈悲で大学院で経営学の、独学で英語の学び直しを行っている。
著作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送サテライトTV」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議にたびたび出席し産業政策を提出。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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